1990 Fiscal Year Annual Research Report
家畜の免疫不全症診断への電子磁気共鳴法の適用に関する研究
Project/Area Number |
01560333
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
桑原 幹典 北海道大学, 獣医学部, 助教授 (10002081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 大二 北海道大学, 獣医学部, 助手 (40168828)
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Keywords | 免疫不全症 / 顆粒球不全症 / 好中球 / ス-パ-オキシド / 電子スピン共鳴法 / スピン捕捉法 / NADPHオキシダ-ゼ / ホルボ-ルミリステ-トアセテ-ト |
Research Abstract |
家畜の免疫不全症の一要因として、好中球の機能不全が挙げられる。好中球の機能は活性酸素生成と密接に関係していると考えられているので、電子磁気共鳴(ESR)法とスピン捕捉(ST)法を組み合わせた方法(ESRーST法)により、好中球から発生する活性酸素の測定を試みた。その結果をもとに、ESRーST法が免疫不全症診断に適用可能か否かを検討した。好中球は牛、馬、人の血液より採取された。また、診断上チェディアク-東症候群と疑われた牛からも好中球を採取し、実験に供した。これらの好中球にホルボ-ルミリステ-トアセテ-トを加え刺激し、その時に発生する活性酸素を測定した。活性酸素は単寿命であるための直接測定が不可能であることから、ジメチルピロリンー1ーオキシドにより長寿命の安定なニトロオキシドに変えてから測定した。もう一つの測定法として、活性酸素がルミノ-ルと反応してルミネッセンス光を発生することを利用して、光検出器による測定も行った。 ESRーST法と発光検出法を利用して人好中球における活性酸素の測定を行ったところ、発生する活性酸素の種類はス-パ-オキシド(O_2^ー)と同定され、その同定にはESRーST法が、また定量的測定には発光検出法の方が適していることが判明した。また、牛、馬、人の好中球の活性酸素生成量を比較したところ、いずれの方法を用いても馬と人は同定度に発生するが、牛は二十分の一程度しか生成しなかった。この原因については現在調査中である。チェディアク-東症候群と疑われた牛の場合、活性酸素生成量に異常は認められず、好中球不全症との関係は見られなかった。以上の結果から、馬、人の好中球のように活性酸素生成量の多い場合、ESRーST法のみで定性的、定量的測定が可能であるが、牛のように活性酸素生成量の少ない場合、定性的な方法としてESRーST法を、定量的な方法として発光検出法を適用するのが最も適切であることが判明した。 今後、牛の好中球のように低濃度の活性酸素しか生成しない場合、刺激剤を改良するか活性酸素生成機構の活性化剤の使用等の工夫が必要であり、またより多くの患畜からのデ-タの畜積も必要と考えられる。
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[Publications] Wakako Hiraoka: "Freeーradical reactions induced by OHーradical attack on cytosineーrelated compounds" Nucleic Acids Research. 18. 1217-1223 (1990)
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[Publications] 高橋 恒夫: "凍結および浸透圧ストレスにおけるフリ-ラジカル産生:ヒト多形核白血球をモデルとして" 凍結および乾燥研究会誌. 36. 28-35 (1990)
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[Publications] 平岡 和佳子: "PLD修復阻害剤ーピリミジン核酸誘導体の効果" 医学のあゆみ. 155. 377 (1990)
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[Publications] Wakako Hiraoka: "Effects of 3'ーdeoxyadenosine (cordycepin) on the repair of Xーrayーinduced DNA singleーand doubleーstrand breaks in Chinese hamster V79 cells" Journal of Radiation Research. 31. 156-161 (1990)
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[Publications] Wakako Hiraoka: "Characterization of free radicals in γーirradiated polycrystalline uridine 5'ーmonophosphate:a study combining ESR,spin trapping and HPLC" International Journal of Radiation Biology.
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[Publications] Mikinori Kuwabara: "Chemical processes induced in nucleic acids by OH attack" Radiation Physics and Chemistry.