1989 Fiscal Year Annual Research Report
宮崎県下におけるドロレス顎口虫の生活環、特にヒトへの感染経路の解明
Project/Area Number |
01570217
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Research Institution | 宮崎医科大学 |
Principal Investigator |
名和 行文 宮崎医科大学, 医学部・寄生虫学, 教授 (10040172)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
緒方 克己 宮崎医科大学, 医学部・皮膚科学, 講師 (10109647)
大橋 真 宮崎医科大学, 医学部・寄生虫学, 助手 (40128369)
阿部 達也 宮崎医科大学, 医学部・寄生虫学, 助手 (80128363)
今井 淳一 宮崎医科大学, 医学部・寄生虫学, 助教授 (00039918)
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Keywords | 顎口虫症 / 人獣共通感染症 / 幼虫移行症 / ドロレス顎口虫症 / 生活環 / 中間宿主 / 待機宿主 / 宮崎県 |
Research Abstract |
1985年より現在まで宮崎県下においてのべ11名のドロレス顎口虫症患者が見いだされている。これらの患者はいずれもライギョやドジョウの生食歴がなく、1名を除き全て渓流釣り愛好者あるいはその家族で、ヤマメその他の渓流魚の生食歴があり、これが感染源となっている可能性が高い。また1名の患者はマムシを生食しており、後述のようにマムシでは100%の感染率なのでこれが感染源と考えられる。 1988年11月〜1989年2月の狩猟解禁期間中に宮崎県中央部山地で捕獲されたイノシシの胃を検査し、ドロレス顎口虫感染状況を調べたところ、10頭中7頭に感染が見られ、現在でも本虫が県下で広範に浸淫していることが明らかになった。イノシシ胃内から得た雌成虫の子宮より虫卵を取り出し、人工孵化して得た第1期幼虫を冷水型ケンミジンコ(C.vicinus)に感染させて、第3期幼虫を得ることができた。 宮崎県中央部山地で捕獲されたマムシは全例筋肉内にドロレス顎口虫第3後期幼虫を保有しており、なかにはマムシ1個体から100匹以上の幼虫が検出されたものもある。さらに、同地域で捕獲されたシマヘビからも同様にドロレス顎口虫第3後期幼虫が検出され、ヘビが待機宿主として、また人体への感染源として重要であることが明らかとなった。マムシとシマヘビはともにカエルを補食対象としていることから、カエルが中間宿主として重要であると考えられる。マムシから回収した第3後期幼虫をブタに投与したところ、3ヶ月後に成虫が得られたので、この幼虫が感染性を保持していることが確認された。 患者への感染源として最も疑われているヤマメについては計5回にわたり100匹以上検査をしたが、これまでのところドロレス顎口虫幼虫は検出されておらず、感染率は非常に低いものと思われる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 名和行文,緒方克己,今井淳一: "ドロレス顎口虫症" 最新醫学 特集:今日の日本の寄生虫症-その特徴と対策-. 44. 807-814 (1989)
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[Publications] 名和行文,緒方克己,今井淳一: "〈ケ-ススタディ〉顎口虫症" 臨床医 特集:注目される寄生虫感染症. 16. 348-350 (1990)
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[Publications] 名和行文: "風土病としての寄生虫病 (3)蠕虫性疾患" 日本医師会雑誌.
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[Publications] 名和行文: "顎口虫症" 今日の治療指針.
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[Publications] J.Imai,H.Akahane,S.Horiuchi,H.Maruyama,and Y.Nawa: "Gnathostoma doloresi:Development of the larvae obtained from snakes.Agkistrodon halys,to adult worms a pig." Jap.J.Parasitol.38. 221-225 (1989)
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[Publications] Y.Nawa,and J.Imai: "Current status of Gnathostoma doloresi infection in wild boars captured in Miyazaki Prefecture,Japan." Jap.J.Parasitol.38. 385-387 (1989)