1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01570290
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
三浦 創 熊本大学, 医学部, 教授 (00039489)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大森 昭子 熊本大学, 医学部, 助手 (60040193)
原田 幸一 熊本大学, 医学部, 講師 (00094029)
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Keywords | 鉛中毒 / 赤芽球系細胞 / 核酸代謝障害 / ピリミジン5 / ヌクレオティデ-ス / 核磁気共鳴 / 高速液体クロマトグラフィ- |
Research Abstract |
我々は、鉛の生体影響に関心を持ち研究をおこなってきたが、近年、遺伝的溶血性貧血患者の赤血球中にPyrimidine-5'-nucleotidase(P5N)の欠乏がみられ、またP5N活性が鉛暴露により阻害されることを知った。そこで、P5N活性阻害について生体内意義や、鉛暴露指標としての有用性について検討を試みた。まず、日本白色性雄性家兎へ鉛として0(対照群、n=4)、0.4mg/kg(n=5)、2mg/kg(n=5)を週2回静注した。食餌は、鉛の2mg/kg群の食餌量を他群へ与え制限食餌をおこなった。投与期間中、採血、採尿を週1回おこなった。鉛投与の5週目の影響をみると、Ht(対照群:39.0±1.7%、pb2mg/kg群:31.1±3.0%)、血清鉄(対照群:308±22.7μg/dl、pb2mg/kg群:249.9±50.4μg/dl)および血清GOT(対照群:22.5±9.9unit、pb2mg/kg14.0±3.5unit)は、pb2mg/kg群で低下しており、鉛の生体影響を窺うことができた。また、全血ALA-D(対照群:2.15±0.18μmolesPBG/mlーpcv/h、pb0.4mg/kg群:0.52±0.14、pb2mg/kg群:0.30±0.06)およびFEP(対照群:59.6±8.0μg/dl・pcv、pb0.4mg/kg群:192.1±53.3μg/dl・pcv、pb2mg/kg群:486.6±64.4μg/dl・pcv)は用量-作用関係を示しており、鉛暴露指標として有効性が再確認された。一方、P5N活性(対照群:372±39nmol uridine/gーHb/h、pb0.4mg/kg群:239±38、pb2mg/kg群:245±27)は鉛投与群で低下したが用量-作用関係は明らかでなく鉛暴露の実用的生体指標としてはALA-DやFEPに劣ることがわかった。次に鉛による赤芽球系細胞の核酸代謝障害を窺うため鉛投与家兎血液についてH-NMRをみたところ対照群に比べ微細なピ-クがNMRクロマトグラム上にみられたが、詳細な同定は困難であり、血液中核酸代謝物質の蓄積変化をみるにはHPLCによる分離同定が今後検討されねばならない。さらに鉛によるP5N活性阻害の生体内意義を調べるには、P5Nの精製をおこない、in vitroでの鉛のP5Nへの作用を検討することも今後の課題の一として必要である。
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