1989 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素状態における内耳病態の生態酸素組織化学と電顕学研究
Project/Area Number |
01570966
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
佐藤 喜一 金沢医科大学, 総合医学研究所, 教授 (60102034)
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Keywords | 低酸素症 / 有毛細胞 / コハク酸脱水素酵素 / 乳酸脱水素酵素 |
Research Abstract |
研究課題について行った本年度の研究で、次の点を明らかにする事が出来た。(1)実験動物(モルモット)について呼吸、循環器系を完全に管理できる実験状態を安易に出来るようになり、管理下の動物の心電図、血圧を測定し、その変動をモニタ-に記録できた。(2)5%酸素と95%窒素の混合ガスを呼吸させ、継続する事で聴性脳幹反応(Auditory brainstem response以下、ABRと略記)は次第に平坦化してきた。ABRの平坦化は混合ガスの呼吸継続60分頃から始まった。即ち、振幅が平坦となり潜時が延長してきた。(3)60分頃から75分まで混合ガスを呼吸させ、その後、空気ガスに切り替えるとABRが再現し、これを継続する事で20分後には、実験前のABRとなった。しかし(4)混合ガスの呼吸を90分間継続し、その後、空気ガスに切り替えてもABRの再現は認められなかった。(5)対照群と実験前のモルモットの動脈血の酸素と炭酸ガス濃度はPaO_2は平均125mmHgで、PaCO_221mmHgであった。(6)(4)の状態のモルモットの内耳に、コハク酸脱水素反応(SDH)と乳酸脱水素酵素反応(LDH)を施した。その後、実体顕微鏡下に有毛細胞の剥離標本を作成し観察した結果、SDH活性が著明に低下し、LDH活性が強く染色した像を観察した。(7)(4)の状態の有毛細胞を透過電顕で観察した結果、ミトコンドリアの著明な膨化像が見られた。これらの結果から、5%酸素と95%窒素の混合ガスを吸入させると低酸素症となり、その影響は有毛細胞に及び、ABRの上で感音難聴になると推察した。この成績は突発性難聴発症の一つの因子になる事を示唆していると思われる。
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Research Products
(2 results)