1990 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素状態における内耳病態の生態酸素組織化学と電顕学研究
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01570966
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Research Institution | Medical Research Institute, Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
佐藤 喜一 金沢医科大学, 総合医学研究所, 教授 (60102034)
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Keywords | 低酸素症 / 有毛細胞 / 血管条 / 透過電顕 / 聴性脳幹反応 / 急性感音難聴 |
Research Abstract |
今年度の研究では低酸素状態を繰り返すことで聴性脳幹反応(ABR)が平坦化してくる機序を明らかにするために、主として透過電顕にて検索を進めた。その結果(1)ABR平坦化を起こした蝸牛有毛細胞のミトコンドリアに膨化像が散在性に見られたこと、(2)血管条の中間細胞に著明な水腫が見られ、辺緑細胞との嵌合に乱れを生じていることを明らかにしたこの新しい所見は急性感音難聴の発症機序を考察する上に有益な証拠になるであろう。 周知のごとく急性感音難聴の発症因子には、耳毒性薬物、内耳圧の変化、内耳循環障害や強大音響曝露などがあるが、未だ原因不明の難聴が存在している。本研究によって、このような原因不明の難聴の病因に低酸素症があることを加えた。すなわち、動物にガスを繰り返して負荷することで急性感音難聴状態することが可能であった。しかし聴覚の感覚細胞である有毛細胞に形態的な大きな変化、例えば変性や消失などが見られないことに着目した。何故なら感音難聴は有毛細胞それ自体の変化であると一般的に言われてきているからである。所が今回の実験では有毛細胞の微細構造の変化以外に、血管条に著明な変性すなわち中間細胞に水腫が発症していることを明らかにした。この事実は有的細胞が存在している内リンパ腔のリンパ液の組成、特に酸素濃度に少なからずの変化を与え、いわゆる低酸素のリンパ液になっていると考察できた。従ってこの状態では有毛細胞が十分に機能を果たすことが不可能であり、結果として急性感音難聴の状態を惹起していると考えた。なお副所見として次のデ-タを追加したい。実験前の動脈圧は平均60mmHgであったが、ガス負荷時には40mmHgに低下した。心電図ではガス負荷時に徐脈性不整脈が表れた。PaO_2は平均99.6mmHgであったが、屠殺前は10.9mmHgであった。PCo_2は26.0mmHgであったが屠殺前は56.7mmHgであった。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 佐藤 喜一: "低酸素血症の蝸牛有毛細胞の呼吸代謝" 日耳鼻. 92. 1536-1537 (1989)
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[Publications] 佐藤 喜一: "低酸素症下における蝸牛有毛細胞の呼吸代謝" 金沢医科大学総合医学研究所年報. 1. 213-216 (1989)
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[Publications] 佐藤 喜一: "Hypoxiaにおける有毛細胞の動態ー組織化学的電顕学的観察" 第38回日本基礎耳科学会 (仙台市) 発表. (1991)
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[Publications] Kiichi SATO: "Alteration of ABR and the inner ear in hypoxic condition" Otology Japan. 1. (1991)
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[Publications] 佐藤 喜一: "突発性難聴の一成因" 第47回鹿児島耳鼻咽喉科臨床会講演. (1991)