1989 Fiscal Year Annual Research Report
光と熱によってレチニリデンシック塩基がタンパク場でおこす高速異性化運動のモデル化
Project/Area Number |
01571156
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小川 晴 九州大学, 薬学部, 助教授 (90037573)
|
Keywords | 光エネルギ-変換 / 光駆動の人工化学サイクル / タンパク場でのポリエン異性化モデル / pkaの循環的変化 / プロトン輸送の分子触媒 / 光異性化 / 熱異性化 |
Research Abstract |
レチノイドタンパクを代表するロドプシンやバクテリオロドプシンは光、熱、プロトンを基質として分子内にとりこんでおこす状態変化が1つの化学サイクルをつくる。これらの化学サイクルは、外部に有用な仕事として、H^+の濃度勾配をつくりだす1種の熱力学的エンジンである。本研究はこれら生体タンパクが行う一種のエネルギ-変換を比較的小さい分子量の環状共役系分子の行う状態変化の化学サイクルから実現するための研究である。コンホメ-ション変化が高速でおこり、その結果、特定の2状態間でプロトンの親和性が変わる化学サイクルを与えるような人工触媒分子の合成を行った。研究計画の期待通り、ジメチルアミノ〔15〕アヌレノンは、H^+、熱、光によって一巡する状態変化からなる化学サイクルをつくることが、^1H-NMRスペクトル、電子スペクトル、液体クロマトグラフィ-などの知見から明らかになった。この人工分子は興味あることに、高い量子収率で光異性体を与え、光異性体は続いて熱異性化を高速で行い、出発物質にもどる一方向への連続した異性化を高速で行うことが判った。人工サイクルの回転数を天然のバクテリオロドプシンの回転数と比較する実験を行った。この結果、本研究の人工サイクルはサイクルの回転数でバクテリオロドプシンのそれには及ばないが、サイクルの律速段階の活性化エネルギ-として12Kcal/molという高速異性化をえた。興味あることに、本研究で用いた基本環状共役系にS-アセチル基を導入した〔15〕アヌレノンはバクテリオロドプシン同様に、明暗順応がおこり、これに伴って〔15〕アヌレノン-〔15〕アヌレンチオンの原子価異性平衡を生ずるというこれまで全く報告されていない新知見をうることができた。O-アセチル〔15〕アヌレンチオンは明順応種として、S-アセチル〔15〕アヌレノンは暗順応種として存在する。^1H-NMRデ-タは購入した高速パソコンで解析できた。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] Haru Ogawa,Yuko Kato: "Oxygen-bridged [15]annulenone undergoes A Rapid Conformational Change for Causing A Better H^+-binding" J.Chemical Soc.Communications. (1990)
-
[Publications] Haru Ogawa,Yuko Kato: "Photoisomerization of An oxygen Bridged [15]annulenyl Ion whose State-to-state Changes can form a Bacteriorhodopsin-cycle" J.Chemical Society Communications. (1990)