2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01F00020
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
嶺重 慎 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LIU Bifang 京都大学, 基礎物理学研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | ブラックホール / アクリーションディスク / コロナ / 熱伝導 / X線放射 / コンプトン散乱 / 宇宙論 / クェーサー |
Research Abstract |
クェーサーの数密度は、赤方偏移z〜2あたりから現在に至るまで急激に減少しており、また宇宙全体の星形成率も同様の進化を遂げていることが、近年の観測的研究の進展により明らかになってきた。この謎に取り組むためには、ブラックホール質量と、ガス降着率の関数として、信頼できる多波長スペクトルを計算する必要がある。そこで、初年度で作りあげたアクリーションディスクコロナモデルをもとに、いまだ理解の進んでいないクェーサーの多波長域スペクトル、特にX線からガンマ線に至る高エネルギースペクトルのモデルを今年度は目指した。 まずは、初年度のモデルをもとに、ディスク、コロナ、それぞれの物理構造を計算して求めた。すなわち、(1)コロナ全体では磁気リコネクションによる磁気エネルギーの解放とコンプトン散乱が釣り合っており、(2)コロナと彩層との境界層では、コロナからの熱伝導による加熱とエンタルピーフラックス送出による冷却が釣り合っているとして2つの関係式をたて、それぞれの温度、密度を求めた。すると、それぞれの領域における放射スペクトルがモンテカルロ法を用いて計算することができる。こうして求められたそれぞれの領域からの多波長スペクトルは、両者の間の相互作用が完全ではない。すなわち、コロナ放射は一部ディスクに吸収され散乱され、一方でディスク放射はコロナを通って一部吸収・散乱され、残りは出て観測されるというプロセスをきちんと解く必要がある。すると相互作用の結果、ディスク・コロナの構造が最初に仮定したものとは異なってくる。そこで、それぞれの領域の密度、温度を計算し直し、スペクトルを再計算する、という手順を繰り返し、最終的に、密度、温度構造と自己矛盾のないスペクトルを計算することに成功した。 ところで初年度の研究により、系の光度が比較的大きいとき(エディントン光度の数%以上の明るさのとき)、強いコロナが形成される場合と、あまりコロナが発達しない場合と、二つのケースがあることが判明した。今年度の計算により、前者はハードステートとして知られる、べき型スペクトルが卓越する状態、後者はソフトステートとして知られる、プランク型スペクトルが実現する状態にそれぞれ対応することが明らかになり、観測をみごとに説明することができた。なお、現実の観測スペクトルのフィッティングは今後の課題として残されている。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] B.F.Liu, S.Mineshige, K.Shibata: "A simple Model for Magnetic Reconnection Heated Coronae"Astrophys.J.. 572. L173-L176 (2002)
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[Publications] B.F.Liu, S.Mineshige, F.Meyer, E.Meyer: "Two-Temperature Coronal Flow above a Thin Disk"Astrophys.J.. 575. 177-122 (2002)
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[Publications] B.F.Liu, S.Mineshige, K.Ohsuga: "Spectra from a Magnetic Reconnection Heated Corona in AGN"Astrophys.J.. 587(印刷中). (2003)