2003 Fiscal Year Annual Research Report
ヤギによって破壊された小笠原諸島の植生回復の解析と促進実験
Project/Area Number |
01F00105
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高槻 成紀 東京大学, 総合研究博物館, 助教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
WEERASINGHE U. R. 東京大学, 総合研究博物館, 外国人特別研究員
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Keywords | 小笠原諸島 / 植生回復 / 大洋島 / ヤギ食害 / 埋土種子集団 / 温室栽培 |
Research Abstract |
実質的な調査と解析は14年度に終了し,今年度は発芽実験で発芽した植物のうち,残されていた植物の同定とそれらのまとめをおこなった.その結果,小笠原諸島媒島の植生はヤギによってはげしく破壊され,植生を失った場所では回復が困難であることが示された.しかし同時に残存する森林から一部ながらテリハボク,ウラジロエノキ,ムラサキシキブ属の一種などが発芽することも示され,今後の植生回復の可能性に明るい材料が得られた.植被が回復する場所のうち草本群落では発芽した種の多くは移入植物であり,現状では緑の回復にはなっているものの,望ましい植生に戻るにはなお時間がかかることが示された.移入種が定着したあとに在来種へ遷移するかどうかは現状では不明であり,裸地を緑で被覆することを優先させた従来の工法をふくむ回復計画の真価が問われる.本研究で得られた成果は,これまで現地の植生調査による結果を解釈するという段階を越え,土壌にふくまれる種子を発芽実験によって発芽させ,その組成を定量的に示すという新たな段階に深化したものである.その成果は現在とりくまれている環境省および東京都による植生回復事業にとっても重要な示唆を与えた.
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