2003 Fiscal Year Annual Research Report
生育ステージの異なるイネの高炭酸ガス環境下における光合成の生化学と個体成長
Project/Area Number |
01F00116
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牧野 周 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SENEWEERA Saman Pushpakumara 東北大学, 大学院・理学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 高CO_2 / 光合成のダウンレギュレーション / イネ / Rubisco / 生育ステージ / 葉の老化 |
Research Abstract |
イネのRubisco(光合成の炭酸固定酵素)タンパク質の生成と分解に高CO_2環境が及ぼす影響について調べた。また、70日間人工気象室内においてイネを異なるCO_2分圧下、39Pa CO_2と100Pa CO_2で栽培し、その主茎の上位葉から下位葉にかけて、Rubiscoタンパク質量とそのターンオーバーおよび光合成のガス交換特性を調べた。 光合成速度は、葉の齢の進行に伴い減少し、その減少速度は高CO_2区の方が速かった。高CO_2区での光合成速度の減少は若い葉よりも老化葉の方で特に大きかった。この高CO_2区でのRubiscoタンパク質量の減少と葉の齢の進行に伴う量的減少の促進は、Rubiscoタンパクの生成速度の減少と分解速度の促進の両者によるものであった。葉身窒素は、高CO_2区において葉の齢の違いにかかわらず、普通CO_2区に比較しておおよそ20%低かった。ガス交換特性についてみると、高CO_2区ではRubisco律速領域の光合成速度に比べ、電子伝達律速領域の光合成速度が相対的に高く、この差は下位葉ほど顕著であった。 次ぎに高CO_2環境で展開中の葉について、葉舌のある基部より先端にかけての全窒素量とRubiscoタンパク質量の分布について調べた。全窒素含量は葉の基部の細胞分裂領域でもっとも高く、細胞伸長部位で大きく減少し、先端部では一定値をとっていた。この窒素の分布パターンは成育CO_2濃度の影響を余り受けていなかった。それに対し、Rubiscoタンパク質の分布は高CO_2の影響を受けていた。このことは、展開中への葉への窒素分配は成育CO_2濃度の影響を受けず、光合成の高CO_2におけるダウンレギュレーションはRubiscoタンパク質の生成の抑制と分解の促進によるものであることを示唆した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] S.Seneweera他3名: "Involvement of ethylene in the morphological and developmental response to elevated atmospheric CO_2 concentrations"Plant Growth Regulation. 39. 143-153 (2003)
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[Publications] S.Seneweera他3名: "Response of rice to p(CO_2) enrichment"Journal of Crop Production. 5(in press). (2004)