2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01F00171
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
元木 靖 埼玉大学, 教養学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BILALEDING NIZHAMU 埼玉大学, 教養学部, 特別研究員
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Keywords | 農耕社会 / 牧畜社会 / 土壌浸食 / 草地退化 / 棚田地帯 / 石積み / 農地の温存 / 総合的保全策 |
Research Abstract |
本年度は、中国においては新疆ウイグル自治区伊寧県、日本においては福岡県浮羽町、および長崎県千千石町、川棚町、波佐見町、福島町を対象として、農地の実態と保全に関する現地調査を実施し、以下のような知見を得た。 (1)伊寧県は、中国経済の核心部からおおきく離れた国土の周辺部に位置する。従来、農耕と牧畜が山地と平地に分化して成立してきた地域であるが、ここでは中国経済が基本食糧の確保という段階を過ぎて商品経済が指向されるに至ってから、農地の利用と保全に関して大きな変化が発生している。遠隔地であるため、農家は都市近郊のような商品経済への取組みは困難なため、従来の食糧生産地を飼料生産地として利用することに加えて、山間の遊牧民の草地をも飼料基盤として組み込む形の畜産業が急速に発展したことが大きな特色となった。しかし、その結果としての山地での道路の拡張や家畜の過放牧などによる土壌浸食や草地の退化という深刻な問題が発生しており、今後の大きな課題となっている。 (2)日本では、地形的に限界地で、かつ経済的には都市から離れた山間の棚田地帯のうち、いずれも石積みの棚田が発達する地域を対象とした。米の過剰下で農地の放棄が各地に見られる中で、米生産地としては脆弱な生産基盤のもとにあるにもかかわらず、農地が利用され、温存されている。このことに関する多様な事例の収集と新たな資料を得ることが出来た。また、農地保全の方向として、石積み棚田地帯は水田のみではなく、住宅も石積であり、それに加えて家屋や植木の景観に見事なものが多く、それらを総合的に生かす形での保全策が効果的であることが推察された。さらにより積極的な保全を図るには、棚田が立地する地域の地形環境、および周囲を取り囲む山林(樹種構成、景観)との関係にも配慮していくことが必要であると判断された。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 元木 靖, ビラルディン ニザム: "経済改革下における農耕社会の変化が牧畜社会に及ぼした影響-中国・新疆ウイグル自治区の事例-"埼玉大学紀要. 38-2(印刷中). (2003)
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[Publications] Yasushi Motoki: "Changes in the Structure of Agricultural Land Use in Northeast China"Report of the LU/GEC (1998-2000), Center for Global Environmental Research. Second Phase. 131-145 (2002)
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[Publications] 寺阪, 平岡, 元木編: "関東I・II-地図で読む百年-"古今書院. 273 (2003)