2002 Fiscal Year Annual Research Report
原子核の高励起状態における集団運動とその減衰メカニズム
Project/Area Number |
01F00181
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松柳 研一 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
GU Jianzhong 京都大学, 大学院・理学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | ランダム行列 / ガウス直交アンサンブル / 強度関数 / ブライト・ウイグナー分布 / 複合核状態 / 分散幅 / 集団励起 / 量子カオス |
Research Abstract |
原子核のような有限フェルミ量子系の高励起状態における秩序運動(集団運動)とカオス運動の絡み合いを統一的に理解することを目標として、ランダム行列理論に基づく簡単なモデルを提案し、数値計算によって強度関数の性質を詳細に検討している。このモデルは巨大双極共鳴や超変形バンドのように高励起状態に現れる集団運動状態が、背後にある状態密度の高い複合核状態と結合し、その集団性を失っていく減衰の微視的メカニズムをシミュレートしたものである。すなわち、複合核状態をランダム行列理論のガウス直交アンサンブルの固有状態でモデル化し、ひとつの集団励起状態とこれらの状態群との結合の行列要素もまたガウス分布にしたがうランダム変数として、集団励起に対する強度関数のアンサンブル平均とそれからの揺らぎを数値計算した。集団運動状態と複合核状熊の崩壊幅を考慮し、それらと複合核状態密度の大小関係によって強度関数の性質がどのように変化するか系統的に分析した。特に、複合核状態空間の有限性(ランダム行列の次元の有限性)の効果を注意深く検討した。有限サイズ効果を考慮するとアンサンブル平均された強度関数は(無限サイズの場合と異なり)一般にBreit-Wigner分布からのズレを示し、複合核状態の崩壊幅にも依存する。Breit-Wigner分布からのズレが有限サイズと崩壊幅の大きさにどのように依存するか、その詳細を明らかにした。また、アンサンブル平均だけでなく強度関数の揺らぎの性質も詳細に検討した。更に、これらの研究と平行して、集団励起モードの非調和性を理論に取り込む研究を進めている。今年度は巨大双極共鳴などの2フォノン状態を自己無撞着集団座標の方法によって調べる準備として、簡単な可解モデルに対して自己無撞着集団座標の方法を適用し、集団励起の非調和効果を数値的に分析した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Jianzhong Gu: "Fluctuation of the strength function"Physical Review E. 66. 026208 (2002)
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[Publications] Jianzhong Gu: "Finite size effect on the strength function in a random matrix analysis"Physical Review C. 66. 054312 (2002)