2002 Fiscal Year Annual Research Report
機能性有機薄膜の励起状態ダイナミクスとメゾスコピック構造の時間分解SNOMによる研究
Project/Area Number |
01F00244
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
玉井 尚登 関西学院大学, 理工学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BANGAL Prakriti Ranjan 関西学院大学, 理工学部, 外国人特別研究員
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Keywords | ピラゾール誘導体 / フォトクロミック反応 / 走査プローブ顕微鏡 / フェムト秒分光 / 過度吸収スペクトル / モルフォロジー変化 / 無輻射遷移 |
Research Abstract |
ピラゾール誘導体,ethyl 4-formyl-1-,3-dimethylpyrazole-5-carboxylate (EFDPC)は,室温ないし低温固体状態ではフォトクロミック反応を示し無色から赤色に変化するが,溶液中では色変化が見られない。この原因を明らかにするためにフェムト秒〜マイクロ秒過渡吸収分光を行うと共に,固体薄膜状態における形態変化を走査プローブ顕微鏡で解明した。 1.ピラゾール誘導体のフェムト秒分光 ピラゾール誘導体の溶液中に於ける反応ダイナミクスを解明するために,種々の溶液中においてS_1(n-π^*)励起によるフェムト秒〜マイクロ秒の過渡吸収スペクトル測定を行い,スペクトル分解により解析した。その結果,励起直後にはS_1状態からの吸収が観測されるが,溶媒に依存して2〜4psでフォトクロミック生成物へと変化すること,溶媒に依存して2種類のフォトクロミック生成物が生成すること,その後,数マイクロ秒でどちらも同じ時間スケールで元の化合物に戻ること,等が明らかとなった。従って,室温溶媒中では,固体状態に比べてフォトクロミック生成物がエネルギー的に不安定な状態にあることを明らかにした。 2.ピラゾール誘導体の走査プローブ顕微鏡による研究 固体薄膜においてはピラゾール誘導体にUV照射をして生成したフォトクロミック生成物は50〜60度の熱により元の化合物に戻る。しかしながら,フォトクロミック生成物にUV照射を続けると,生成物が表面から消失することを見いだした。また,その局所的モルフォロジー変化を走査プローブ顕微鏡により解析した。ポリビニルアルコールなどの高分子で被覆すれば消失が防げること,単に熱を加えただけでは元の化合物に戻るだけであることなどから,生成物の光照射による量子収率100%近くの無輻射遷移により局所的に熱が発生し,それが分子固体の昇華エネルギーに変換されたものと考えた。いわぱ,光誘起昇華という非常に興味深い現象を見いだした。
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