2002 Fiscal Year Annual Research Report
高分子の絡み合いダイナミックスについての多重粗視化スケールを有するモデルの構築
Project/Area Number |
01F00279
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡辺 宏 京都大学, 化学研究所, 教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
K. R. PAUL Alok 京都大学, 化学研究所, 外国人特別研究員
|
Keywords | 高分子鎖 / 絡み合い / 管モデル / 管膨張機構 / 誘電量 / 粘弾性量 / 拡散実験 / セグメント平均自乗変位 |
Research Abstract |
管モデルは、高分子鎖に対する絡み合いの効果を、管状領域内への鎖運動の拘束として表現する。現在の管モデルには、周囲の鎖の運動によってこの拘束が緩み、管が時間と共に膨張する機構が中心的緩和機構として組み込まれている。この管膨張機構と他の緩和機構を組み合わせたモデルの予言と線形粘弾性データは相当良く一致する。しかし、この一致は、モデルの仮定する鎖運動が実際に起こっていることを保証するものではない。実際、同一の鎖運動を異なる形で平均化する粘弾性量と誘電量の比較から、直鎖の長時間緩和については管膨張の描像が成立しているが、星形分岐鎖についてはこの描像が破綻していることが明らかにされている。 これらの結果から、直鎖に対しても、短時間域では管膨張描像が破綻している可能性が示唆される。短時間域の誘電量は、粘弾性量に反映される鎖の大規模運動からの寄与に加えて、側鎖運動などの局所運動からの寄与も含む。このため、上記の粘弾性量と誘電量の比較という方法は、短時間域での管膨張の描像の検証にはあまり有用ではない。 この問題に対して、本研究では、短時間域における直鎖の絡み合いセグメントの平均自乗変位φと粘弾性緩和関数μの間の関係式を、管膨張が起こる場合と起こらない場合について、理論的に導出した。たとえば、鎖端セグメントについては、管膨張が起こる場合φ=<R^2>(1-μ1^<1/2>)(<R^2>は鎖の平均自乗末端間距離)、管膨張が起こらない場合φ=<R^2>(1-μ)となる。この導出では、絡み合い鎖がガウス形態を持つことのみを利用し、鎖の運動様式の詳細は仮定していない。従って、得られた理論式は高い一般性を有し、短時間域における拡散実験から得られるφデータと粘弾性実験から得られるμデータの間の関係をこれらの理論式と比較することで短時間域での管膨張の描像の検証が可能となる。
|
Research Products
(1 results)