Research Abstract |
ミレとソルガム澱粉について,既に明らかにした物理化学的諸性質と澱粉の構成成分であるアミロースとアミロペクチンの分子構造をもとに,粒構造を保持した状態で酵素処理し,遊離してくる糖質を調べるとともに,酵素処理澱粉の物理化学的性質と分子構造などの特性の改変を試みた。 ミレ,ソルガム澱粉への予備実験として,解析が容易なアミロースを含まないモチトウモロコシ(アミロペクチン)を供試澱粉とし,枝きり酵素であるPsoudomonasイソアミラーゼ(結晶純度)を用いて調べた。澱粉5g(50mL)にイソアミラーゼ75Uを加え,35℃と50℃で,24と48時間攪拌しながら処理した。澱粉粒から遊離した糖質が最も多かった50℃,48時間(澱粉乾物の7.0%)を処理条件として実験を進めた。遊離した糖は,重合度(DP)13を頂点としてグルコースからDP50まで広く分布した。これは,処理前の枝(単位鎖)の分布によく類似し,特定の単位鎖が枝切りされないことを認めた。酵素処理澱粉では,分子構造に変化が認められた。アミロペクチンの数平均DPは6550から2750となり,高分子種は約2/3の大きさに,またDP300をピークとする分子種が生じ,低分子化されていた。しかし,単位鎖の分布は,処理前とよく一致した。澱粉の物理化学的性質については,X線回折装置とラッピドビスコアナライザーで調べた。酵素処理によって,結晶形には変化はなかったが,糊化特性では,糊化開始温度は変わらないものの,最高粘度,最低粘度,ブレイクダウン,コンシステンシーは,いずれもおよそ2/3に低下し,大きな変化が認められた。 以上のように,澱粉粒のままで,イソアミラーセによって澱粉特性を改変できることが初めて明らかになった。今後,詳細な処理条件の吟味が必要であるが,イソアミラーゼによるミレ,ソルガムをはじめ各種澱粉の特性改変が可能であることがわかった。
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