2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01F00296
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡田 雅人 大阪大学, 微生物病研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
WILLIAM Rengifo Cam 大阪大学, 微生物病研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 癌 / Src / チロシンキナーゼ / Csk |
Research Abstract |
1.ヒト癌におけるCsk (C-terminal Src Kinase)の発現変動 ヒトの種々の癌において、その悪性化にともなって癌原遺伝子産物であるSrc型チロシンキナーゼ(SFK)の活性が上昇していることが知られている。また、それらの活性化によって、癌細胞の浸潤転移能が亢進することが示唆されている。本研究では、特にヒト癌におけるSFKの活性化のメカニズムを明らかにするために、SFKの特異的な活性調節因子であるチロシンキナーゼCskの発現を23例のヒト胃癌組織および30例の肺癌組織について調べた。その結果、胃癌23例中7例(30.4%)で、Cskの発現が正常組織の30%以下に減少していることを観察した。また、肺癌のうち15例の偏平上皮癌では、1例で30%以下の減少、5例で30-60%の減少が認められ、15例の線癌では、Cskの発現に有意な変化は認められなかった。これらの成績から、既に報告のある大腸癌以外の癌、特に胃癌においても、Cskの発現低下によるSFKの活性化が生じている可能性が示唆された。しかしながら、線癌のようにCskの発現低下が認められない例もあることから、癌の種類に差異があることも明らかとなった。 2.大腸癌における細胞密度に依存したSrcの活性化機構の解析 大腸癌においては、その悪性化に伴ってSrcの発現量、活性が上昇すること、また、その活性化が浸潤転移能と関連性があることが明らかとなっている。これまでに、Srcの活性化のメカニズムとしてCskの発現低下の可能性を報告してきたが、それ以外のメカニズムの関与を探るために、癌病巣における癌細胞塊形成過程でみられる癌細胞の相互作用に伴うSrcの活性の変化を検討した。研究対象としてヒト大腸癌細胞HT29、HCC2998、HCT15細胞を用いて、それらの細胞密度とSrcの活性との相関関係を調べた。その結果、分化型のHT29およびHCC2998細胞では、高細胞密度条件下では、Srcの蛋白量および活性が低下することが示された。しかしながら、悪性度の高い浸潤性のHCT15細胞では、逆にSrcの発現量、活性ともに細胞密度と比例して上昇することが見い出された。このことから、細胞の分化状態、特に上皮系から間葉系への変化とSrcの活性との関連性が示唆され、現在、上皮-間葉系転移(EMT)におけるSrcの役割に関する研究を進めている。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] William Rengifo Cam: "Activation of cyclin E-dependent kinase activity in colorectal cancer"Digestive Disease Science. 46. 2187-2198 (2001)
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[Publications] William Rengifo Cam: "Reduced C-terminal Src kinase activity is correlated inversely with pp60c-src activity in colorectal carcinoma"Cancer. 92. 61-70 (2001)