Research Abstract |
未利用有機廃棄物である堆肥を資源として農地へ還元し,健全な物質循環系に立脚した持続的な土壌肥沃度の維持は,世界の食糧生産の安定,地球生態系の保全および環境保全の面からも急務の課題である.本研究では,農林畜産業等から生じる未利用有機廃棄物を高品質コンポスト化し,環境に対する負荷低減と作物生産に適合した持続的効果を明らかにした有機物の循環管理技術の確立を目的とし,生態系を保全しながら土壌の生産性を持続的にする観点から,窒素の有効化を中心にコンポストを評価するため研究を行い,以下の知見が得られた. 家畜排泄物を好気的・嫌気的条件下で堆肥化し,経時的に試料を採取し,水分含量,温度,全炭素,全窒素,腐植物質量,フルボ酸画分,腐植酸画分,多量元素および微量元素等を測定し,これらの堆肥性状間の相関分析を行った.堆肥化後,全炭素は18%,全窒素は10%減少した結果,C/N比はわずかに減少し,14.8から12.9になった.堆肥化の過程で,腐植物質中に占める腐植酸画分が徐々に多くなり,堆肥中の全窒素と腐植物質間で高い有意の正の相関が見られ,腐植物質は堆肥中の全窒素量を反映していた.マンガンと腐植酸に高い有意の正の相関が見られた一方,亜鉛と腐植物質およびフルボ酸に高い有意の正の相関が見られた.リンは31%,カリウムは12%,マグネシウムは11%,カルシウムは6%増加した.堆肥中の微量元素をみると,鉄含量が最も高く,銅含量が最も低かった. 本研究において,各種未利用有機廃棄物の堆肥化過程で,腐植物質としての変化,微量元素の動態および各種土壌中における窒素の無機化過程との関連などについて明らかにすることができた.これら家畜排泄物の良質な資源化のために,また河川水,地下水,植物等の自然生態系と耕地生態系の整合性のある保全のために必要とされる細やかな土壌管理の基礎として,非常に有意義な研究であった.
|