2003 Fiscal Year Annual Research Report
バセドウ病眼症の発症機構の解明と新たな治療法の開発
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01F00334
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中尾 一和 京都大学, 医学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
李 玉妹 京都大学, 医学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | バセドウ病 / バセドウ病眼症 / TSHレセプター / トランスジェニックマウス |
Research Abstract |
バセドウ病眼症はバセドウ病に関連して眼窩組織のおこる自己免疫反応によって引き起こされる。その主要自己抗原の実態は依然不明であるが、有力な候補としてバセドウ病の自己抗原であるTSHレセプターが考えられている。実際、眼窩組織中にTSHレセプターmRNAや同蛋白の存在が示され、病態との関連も示唆されている。 そこで今回、甲状腺特異的MHC-ClassII発現Transgenic mouseを作製し、機能解析を行った。甲状腺上皮細胞は自己免疫性甲状腺疾患の標的細胞であり、バセドウ病の甲状腺細胞においてMHC-ClassIIが過剰発現することが既に示されている。しかし、そのようなMHC-ClassII発現がバセドウ病の発病にどういう役割を果たしているかはまだ明らかではない。そこで、甲状腺細胞にMHC-ClassIIを特異的に発現するTransgenic mouseを作製し、そのmouseの甲状腺機能と自己免疫異常の有無についてまず検討した。ヒトTSHレセプターのpromoterとIAκ(α+β)遺伝子からなるDNA ConstructをC3H/He mouseに導入し、3つのTransgenic mouse (Tg mouse) line、(#1、#4、#5)を樹立した。免疫蛍光染色でIAκ(α+β)蛋白の甲状腺細胞の発現を調べ、#1と#5でMHC-ClassII発現を認めた。8-119週齢の様々の週齢のTg mouseの甲状腺組織像をHE染色で検討した。Tg mouseはWild type mouse (WT)に比べては明らかな異常は認めなかった。CD45の染色によるリンパ球浸潤の検討でも相違を認めなかった。8週齢のTg mouseのFT4はWTよりやや低かった(P<0.05)が、明らかな甲状腺機能異常は見出されなかった。8-12週齢のTg mouseの血清TRAb抗体を測定したが、有意な異常を認めなかった。現在のところバセドウ病やバセドウ病眼症の発症を認めていない。この結果は、同疾患を引き起こすには単なるMHC-ClassIIの発現だけでは不十分であることを示唆している。同トランスジェニックマウスの眼窩組織においては、これまで検討した限り、リンパ球の浸潤等を含めて眼症を示唆するような所見は得られなかった。今後同Tg mouseを用いて、MHC-ClassII発現甲状腺細胞の抗原提示細胞としての意義や免疫反応における役割についてさらに検討する予定である。
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Research Products
(1 results)