2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01F00753
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
牧野 淳一郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BAUMGARDT Holger 東京大学, 大学院・理学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 球状星団 / ブラックホール / 力学進化 / N体計算 / 並列計算機 / 専用計算機 |
Research Abstract |
今年度の主な成果は以下の2点である。 1.親銀河の中を楕円軌道で回る球状星団の構造、質量関数の進化について、恒星進化も考慮して初期条件をサーベイするシミュレーションを行い、質量関数と進化段階の関係から寿命を推定する関係式を構成した。 2.このサーベイ結果に基づいて、中心に中間質量ブラックホールがあると主張された球状星団M15とアンドロメダG1について進化的なモデルを構築し、ブラックホールを形成しない標準的な進化モデルで観測結果を自然に解釈できることを示した。 最初の成果については、Baumgardt and Makino (2002)に発表した。球状星団の進化は熱力学が支配する。つまり、等分配に向かうために平均すると重い星はポテンシャルの底に沈み、軽い星は浮かびあがってくる。結果的には、低質量星は進化の全段階において選択的に系から失われる。最終的な蒸発に近づいた星団では、初期には低質量側で上がっていた質量関数が大質量側で上がるようになる。この傾向は、銀河中心からの距離や初期の中心集中度などのシミュレーションの初期条件に依存しない。この結果、初期段階では星団のM/L(質量光度比)は次第に大きくなる。最終段階では、中性子星などのコンパクト星が支配的になるためにM/Lは増大する。星団の中心においては、コア・コラプスの段階でコンパクト星が支配的になり、M/Lは星団の蒸発よりずっと前に大きくなる。 第2の成果についてはBaumgardt et al. (2003a, b)にまとめた。2002年にハッブル宇宙望遠鏡を使つた球状星団M15とアンドロメダG1の中心部の分光観測からこれらの星団は中心に中間質量ブラックホール(それぞれ太陽質量の3000倍と20,000倍)を持つことがわかったという報告があった。これが事実ならば、銀河中心にある巨大ブラックホールの形成過程の解明にもつながる極めて重要な発見である。しかし、上で述べたように、球状星団の進化の過程で、中性子星などは自然に星団中心部に集まるので、観測の空間分解能が不足しているとこれをブラックホールと誤認する可能性がある。128K粒子の星団モデルで可能な限りM15を模擬するようなシミュレーションを行い、結果を観測データと同様に処理、解析した結果、以下のようなことがわかった。ブラックホールを作らない標準的なモデルで、観測データ、つまり表面輝度分布や速度分散プロファイルは完全に説明できる。しかも、そのデータをハッブル望遠鏡を使ったグループがやったように処理するとブラックホールがあるという結論がでる。言い換えると、ブラックホールがあるという結論がでたのは、解析方法に問題があったからであることがしめされた。G1についても、理由は異なるが同様にブラックホールがないモデルが観測結果を良く説明することがしめされた。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Baumgardt, H., et al.: "Long-term Evolution of Isolated N-body Systems"Monthly Notices of the Royal Astronomical Society. 336. 1069-1081 (2002)
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[Publications] Baumgardt, H., et al.: "On the Central Structure of M15"Astrophysical Journal Letters. 582. L21-L24 (2003)
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[Publications] Baumgardt, H., Makino, J.: "Dynamical Evolution of Star Clusters in Tidal Fields"MNRAS. (in press).
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[Publications] Baumgardt, H., et al.: "Parameters of Core-collapse"MNRAS. (in press).