2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01F00767
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高井 幹夫 大阪大学, 極限科学研究センター, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ANGELOV Hristo Vachkov 大阪大学, 極限科学研究センター, 外国人特別研究員
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Keywords | イオンビーム誘起結晶成長 / 照射誘起拡散 / 非熱平衡 / 不純物元素 / アニール |
Research Abstract |
本研究では、電力制御用半導体素子への応用を考慮しつつ、イオンビーム誘起結晶成長の基礎特性のうち、これまでほとんど調べられていなかった不純物元素の格子位置への置換について研究を行った。 Si中の固溶度と拡散速度が極めて低い3種類の不純物元素(Te、Pb、Bi)をSi結晶中にイオン注入して非晶質層を形成し、その非晶質層をイオンビーム誘起結晶成長した後の不純物元素の分布と格子置換率を調べ、単純加熱による結晶成長の場合と比較した。試料にはCz成長の(100)面Siを使用し、不純物元素をエネルギー100keV、ドーズ量1×10^<15>cm^<-2>で室温注入した。この時表面から730〜870Åの深さまで非晶質層が形成された。この後、非晶質層端の重損傷層を除去し、単結晶層との界面を平滑化するため、450℃1時間のアニールを行った。このようにして準備した試料を400℃に加熱しながら3MeV Siイオンビームをドーズ量5×10^<15>〜2×10^<16>cm^<-2>の範囲で照射してイオンビーム誘起結晶成長を起こした。またイオンビーム照射しない熱処理だけの場合には、525℃20分間の加熱を行った。結晶成長後の試料は、1.8MeV Heイオンビームによるラザフォード後方散乱(RBS)/チャネリング法により分析した。 実験結果のうち、不純物元素の深さ分布の変化に着目すると、PbとBiの場合、イオンビーム誘起結晶成長で非晶質/単結晶界面が表面に向かって進行すると同時に顕著な再分布が起き、一部は表面に偏析した。一方、Teの場合には、結晶成長を行っても再分布や表面への偏析はほとんどなかった。これらの差は不純物元素の融点に関係していると考えられるが、熱のみのアニールの場合は、一貫して表面への偏析は起きていないことから、照射誘起拡散が起きていることを示唆している。また、不純物元素の濃度に着目すると、3種類の元素いずれの場合も、固溶度を遥かに上回る濃度でSi結晶中に残留しており、非熱平衡的に不純物元素が結晶中に取り込まれたことが分かる。同様に、熱のみのアニールの場合でも固溶度を上回る濃度が得られたが、格子位置への置換率は80〜87%あり、イオンビーム誘起結晶成長の場合の39〜70%(2×10^<16>cm^<-2>照射後の値)よりも高かった。イオンビーム誘起結晶成長では、イオンがフレンケルペアを形成し、そのうち、原子空孔は不純物元素に対し置換位置を提供するが、格子間原子は不純物元素の拡散を促し、逆の効果を持つ二つの作用が競合して、その結果、熱のみのアニールとは異なる結果が得られたと考えられる。このような結果は、これまで報告されておらず、イオンビーム誘起結晶成長に関する新たな知識を加えることになった。
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Research Products
(1 results)