2002 Fiscal Year Annual Research Report
エチレン系アイオノマーの溶融レオロジー特性に関する研究
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01F00778
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小山 清人 山形大学, 工学部・機能高分子工学科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KURIAN Thomas 山形大学, 工学部・機能高分子工学科, 外国人特別研究員
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Keywords | 工業化学 / 高分子 / エチレン / アイオノマー / 金属 / 粘度 / レオロジー |
Research Abstract |
エチレン系アイオノマーの溶融レオロジー特性の研究は、当研究室においてエチレンメタクリル酸共重合体をベースの材料を用いてこの10年間研究を展開してきた。エチレンアクリル酸共重合体をベースのものの研究報告はほとんどなく、昨年より、エチレンアクリル酸共重合体をベースのアイオノマーの研究を、まず、サンプルの熱安定性の確認を行ったあと、動的せん断粘度特性、その温度依存性の基礎特性の検討を行った。従来のエチレンメタクリル酸共重合体ベースのアイオノマーのレオロジーの特性とは異なる、興味ある現象が観測されている。 エチレンアクリル酸共重合体は、それ自身で、エチレンメタクリル酸共重合体より熱安定性に不安定であることが明らかとなった。具体的には、エチレンメタクリル酸共重合体、およびそのアイオノマーは200度で粘度の経時変化が安定しているが、一方、エチレンアクリル酸はそれ自身で粘度がゆるやかに上昇する現象が見られた。これはカルボン酸の無水物の形成による架橋とアルファー水素引き抜きによる架橋とが考えられるが赤外分光分析よりカルボン酸の無水物の形成が確認できなかったことよりアルファー水素引き抜きによる架橋が進行したためと考察した。また、ナトリウムや亜鉛イオンを含むエチレンアクリル酸系のアイオノマーでは、エチレンアクリル酸共重合体の粘度上昇がおさえられていた。このことより金属クラスタによりアルファー水素引き抜きによる架橋反応をおさえられていることがわかった。 動的せん断粘度特性の温度依存性よりエチレンアクリル酸共重合体ベースのアイオノマーの活性化エネルギーを算出したところ、同じ中和度では亜鉛アイオノマーの方が活性化エネルギーがナトリウムアイオノマーよりも低かった。この傾向は、エチレンメタクリル酸共重合体をベースのアイオノマーとまったく逆である。イオンクラスターの凝集の強さがベース材料の構造で変化していることが示唆され、今後、イオンクラスターの大きさの分析を進め統一的な解釈を確立したい考えである。 また、従来の触媒系のポリエチレンやメタロセン触媒系ポリエチレンより、エチレン系アイオノマーの良好なホットタック特性のメカニズムの検討を、分子の拡散、拡散層の厚み、ホットタック強度が得られるまでの時間などの点より、包装フィルム加工メーカーの藤森工業(株)と共同で行っている。エチレン系アイオノマーの分子全体の緩和が、他の材料に比較して著しく長いにもかかわらず、ホットタック特性が良好な原因として、拡散層厚みが薄くてもイオン結合により充分なホットタック強度が得られるからであることがわかってきた。 外部への発表として、エチレンアクリル酸共重合体の基礎的レオロジーの特性の結果についてまとめ、国際学会(International Seminar on Advances in Polymer Technology, India, Dec.13-14,2002)で発表した。現在、投稿論文として準備中である。本年11月までに、得られたエチレンアクリル酸共重合体の基礎的レオロジーの特性まで明らかにしたい考えである。
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[Publications] T.Kurian, M.Nishio, A.Nishioka, T.Takahashi, K.Koyama: "Dynamic Melt Rheology of lonomers based on Poly (ethylene-co-acrylic acid)"International Seminar on Advances in Polymer Technology (APT '02) abstracts. 1-1. 29 (2002)
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[Publications] T.Kurian, M.Nishio, A.Nishioka, T.Takahashi, K.Koyama: "Comparison of Dynamic Melt Rheology of lonomers based on EMAA and EAA"Micro Symposium on Soft Material, Yamagata University, Yonezawa, Japan abstracts. 1-1. 29 (2003)