2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J00280
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中西 尚志 長崎大学, 大学院・生産科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | フラーレン / カチオン性マトリックス / 人工脂質二分子膜 / フラーレン脂質 / 還元剤 / 気-液界面ラングミュアー膜 / ポルフィリンオリゴマー / 自己組織化単分子膜 |
Research Abstract |
フラーレンC_<60>に三本のアルキル長鎖を導入したフラーレン脂質(アルキル長鎖の異なる3種類)の合成、自己組織化二分子膜の形成挙動、二分子膜相転移挙動、電子移動反応の相転移依存性、電極還元における支持電解質カチオン依存性などの検討を行い、フラーレン脂質の自己組織化膜特性、電極反応特性を詳細に明らかにし、Chemistry A European Journalに発表した。 上記フラーレン脂質は気液-界面においてラングミュアー膜を形成する。しかしながら、フラーレン部位、脂質部位は何れも疎水的性質を持つため、気液-界面でどちらの部位が水面側、気相側に向いているのかなど詳細は未解決であった。この問題点を、京都大学の松岡研究室の気液-界面反射X線回折測定装置を用いて、ラングミュアー膜の電子密度を詳細に検討することにより、フラーレン部位が水面側、アルキル長鎖脂質部位が気相側へ配置していることを明らかにした。この結果は、Langmuirに発表した。 フラーレンC_<60>ならびにC_<70>と両親媒性脂質類似膜のコンポジット膜を基板上へ作製し、その水中における還元挙動についてNa_2S_2O_4を用いた化学的還元により検討し、その電気化学的還元特性と比較検討した。C_<60>、C_<70>何れもマトリックスとして中性、アニオン性脂質を用いた場合、もしくはマトリックス非存在下では、C_<60>、C_<70>の還元反応は起こらず、カチオン性マトリックスとのコンポジット膜においてのみC_<60>、C_<70>の一電子還元体が近赤外吸収スペクトルにより観測できた。このマトリックスの電荷依存性は電気化学的還元特性と一致しており、フラーレン還元体の対カチオンとしてマトリックスのカチオン部位がその働きを担っていることを証明した。 本年度7月より英国、オックスフォード大学のHarry Anderson研究室へ渡航し、電極上へ自己組織化膜を形成可能な部位を持つポルフィリンオリゴマーの合成に取り組んでいる。この分子にフラーレンを導入することができれば、人工光合成モデルとしての応用だけではなく、超分子構造をもつナノデバイスの構築が期待できる。また、ポルフィリンオリゴマーとリガンド配位子との超構造形成挙動に関してH NMRと紫外可視吸収スペクトルの解析プログラムを用い検討し、更にその超構造の非線形光学特性に関して検討を行った。
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[Publications] Takashi Nakanishi: "Structure and Electrochemistry of Self-Organized Fullerene-Lipid Bilayer Films"Chemistry A European Journal. 8, No7. 1641-1648 (2002)
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[Publications] Takashi Nakanishi: "Nanostructure of Fullerene-Bearing Artificial Lipid Monolayer on Water Surface by in situ X-ray Reflectometry"Langmuir. 18, No25. 10042-10045 (2002)