2002 Fiscal Year Annual Research Report
ネクローシス様神経細胞死を抑制する新規蛋白質(NDI)の作用機構の分子基盤の解明
Project/Area Number |
01J00307
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
濱邊 和歌子 長崎大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 神経細胞死 / 脳虚血 / PKC / 保護物質 / ネクローシス / インスリン / NDI / ATP |
Research Abstract |
本研究では脳を守るという観点から破壊的細胞死であるネクローシスを収束的な細胞死であるアポトーシスにモードスイッチすることにより、傷害領域の拡大を防ぐという脳保護機構に注目して研究を行ってしいる。これまでに、17日胚ラット大脳皮質初代培養系に於いて無血清高密度培養上清中の活性本体であるNDIが、低密度培養に見られるネクローシスをアポトシスにモードスイッチさせることで神経細胞死を遅延することを示した。さらにその情報伝達にはホスホリパーゼC(PLC)-プロテインキナーゼC(PKC)系が関与している事を明らかにしてきた。本研究で観察される低密度培養におけるネクローシスは、既知の神経栄養因子では保護されないという特徴を持つが、さらに細胞内ATPレベルの急激な低下及びグルコース取り込み量の減少と関連しており、NDIはこの両現象を著明に抑制することが明らかになった。ネクローシスの細胞内情報伝達機構については殆ど報告がないため、グルコース取り込み上昇を示すことで知られるインスリンの効果を調べたところ、10〜100μg/mlという高濃度において顕著なネクローシス抑制効果が示された。電子顕微鏡レベルでの解析により、インスリンはNDIとは異なりアポトーシスへのモードスイッチは誘導せず、ネクローシスを抑制すること明らかになった。興味深いことに、インスリンは細胞内ATPレベルを上昇させることなくネクローシスを抑制した。さらに各種阻害剤を用いた結果、高濃度のインスリンによるネクローシス抑制効果はチロシンキナーゼ(TK)、PLC及びPKCを介していることが示された。
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