2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J00443
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中島 良介 大阪大学, 産業科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 異物排出膜輸送体 / X線結晶構造解析 / SPring-8 |
Research Abstract |
研究目的)膜輸送という現象はもっとも基本的な生命現象の一つである。この膜を介した物質輸送の原理を理解するためには詳細な立体構造情報が必須である。本研究では、異物排出膜輸送体を素材として、世界に先駆けて膜輸送体のX線結晶構造解析による立体構造決定を目指す。 結果)結晶化条件の検討の結果、回折実験に使用できる異物排出膜輸送体の結晶(空間群R32)を得た。これを用いた放射光施設SPring-8での回折実験の結果、3.5Å分解能で198,425個の反射を観測、データの完全性98.6%で26,406個の独立の反射に対するRmergeは9.0%だった。また、水銀、白金、オスミウムの多重同型置換法で位相を決定した。さらに、セレノメチオニン置換AcrBの結晶から差フーリエ法でセレニウム原子の位置を決め、分子モデリングの際の指標として用いた。その結果、3.5Åの分解能で分子モデリングと構造精密化に成功(共同研究者による)し、3個のプロトマーがクラゲの様な形に並んだ三量体構造が明らかになった。ペリプラズムに突き出した頭部と、膜に挿入された足のように見える膜貫通部からなっている。頭頂部には漏斗状の開口部があり、この部分でTolCと直接結合しているらしい。この結晶構造によって、ようやく多剤排出というメカニズムを現実の分子構造をもとに議論する出発点が得られた。これらの成果はnature(vol.419,10 oct 2002)に発表された。 異物の認識・排出機構の解明には、基質となる異物との複合体の立体構造情報が不可欠である。私は構造解析に用いた結晶に基質を浸潤させる方法で複合体結晶の調製を試みた。これまでに複数の基質について、これを浸潤させた結晶の回折データを収集した。今後これらの解析を進める。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] S.Murakami, R.Nakashima, E.Yamashita, A.Yamaguchi: "Crystal structure of bacterial multidrug efflux transporter AcrB"nature. 419. 587-593 (2002)