2002 Fiscal Year Annual Research Report
生殖機能としての女性性と社会制度の関わりから読むアメリカ・リアリズム小説研究
Project/Area Number |
01J00449
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉野 成美 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | イーディス・ウォートン / ケイト・ショパン / セオドア・ドライサー / 女性 |
Research Abstract |
今年度の研究活動は、前年度に完成させた研究論文を少しずつ修正しながらまとめること、また、そのテーマの枠組を広げ、扱う小説家や作品をこれまでのイーディス・ウォートンとセオドア・ドライサーのものから同時代の他の作家が書いた小説へ少しずらすのを試みたことに集約される。まず、研究論文をまとめる作業であるが、誤字脱字、英語の言い回しなど、詳細部分を中心に見直し、修正することを中心に作業を進めていたが、大阪大学大学院文学研究科より、その紀要に、本論文の要約文の日本語原稿を依頼されたため、英語で書かれたものを日本語に戻したうえで、まとめる作業も同時に行うこととなった。この紀要は、平成15年3月末に出版予定となっている。 また、もう一つの業績として挙げられるのが、前述のドライサー、ウォートンと同時代で南部出身の女性作家、ケイト・ショパンの描いた作品、「デジレの赤ん坊」について、そこに描かれる赤ん坊の出産という出来事が家を崩壊させるまでのプロセスを結婚制度と生物学的生殖の矛盾に見出すことを試みている。この物語では、赤ん坊は生物学的にはもちろん結婚した男女の白人の間にうまれているのだが、黒人の様相をしていたため、赤ん坊を実質的に生んだ母親の出生が疑われるが、最終的には父親側の血筋が原因であったことが判明する。生物学的な事実としての両親の血筋は、しかしながら、父性を重んじる社会的な結婚制度によって抹消され、父親の姓を与えられなかった母子は、最終的に社会に居場所を無くし、死んでいく運命であったという,点を本論文では強調している。なお、この論文は平成14年10月に刊行された論集『ドラマティック・アメリカ』の中に収められている。
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Research Products
(2 results)