2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J00454
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
蔵本 典之 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 意味 / 価値 / 詩的言語 / 詩画比較論 / シモニデス / プラトン / ホラティウス / サルトル |
Research Abstract |
昨年度におこなった口頭発表を整理し、広島芸術学会の年報『藝術研究』第15号に「文学の意味と文学の価値」を発表した。 そこでは、文学の意味と文学の価値との関係を、文学作品の一義性(わかりやすさ)と多義性(わかりにくさ)という二面性に基づいて、「意味に同調する価値」および「意味に反発する価値」という新しい独自の観点から考察した。「意味に同調する価値」については主として文学作品の実用的価値(教導的価値・娯楽的価値など)の問題を扱い、「意味に反発する価値」については詩的言語の美的価値の問題を扱った。その際、ホラティウスやサルトルの言説を手がかりにした。また、文学ジャンル間での比較と芸術ジャンル間での比較とをまじえて、これらの問題を論じることになった。どちらもともに大きな概念である意味と価値との関係を論じつくすことはできないにしても、両概念の考察のための新たな枠組みを提示したという点で、今後につながる研究となったように思われる。 とはいえ、こうした文学の中心的概念を純粋に科学的に説明しようとすることには限界があることを痛感させられた。われわれが拠って立つ文芸学とは、言うまでもなく、文学の科学であるが、科学だからといってかならずしも概念操作のみに終始しなければならないわけではない。研究課題たる「芸術としての文学の思想性・社会性・政治性」の追求のためには、文学作品の個別性にも配慮した文学ジャンル論こそが有効であろうという認識に達した。
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Research Products
(1 results)