2003 Fiscal Year Annual Research Report
メルロ=ポンティにおける<社会的なもの>の存在論の可能性
Project/Area Number |
01J00464
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西村 高宏 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | メルロ=ポンティ / 社会的なもの / 史的唯物論 / 人間主義 / 実存 / コルネリウス・カストリアディス / 歴史 / 存在論 |
Research Abstract |
本年度は、これまでの研究成果をもとに、「メルロ=ポンティにおける<社会的なもの>の存在論の可能性」を、メルロ=ポンティの歴史理論(史的唯物論)といった切り口から問題にし、「学位論文(メルロ=ポンティの史的唯物論-<人間主義>からの転換というプラン-)」として提出した。 メルロ=ポンテイは「ある種の史的唯物論」、あるいは、「『広義』の史的唯物論」に関する解釈を自身の歴史理論の中心に据え付ける。メルロ=ポンテイ自身、「歴史の論理という考え方からは、その必然的な帰結としてある種の史的唯物論が生じてくる」とさえ明言している。そしてその歴史理論は「1844年のフォイエルバッハ-マルクス」(『経済学・哲学草稿』)からの影響や、また前期のメルロ=ポンティ自身の「歴史の実存的把握」といった観点、などから、きわめて<人間主義>的な歴史理論として展開される。つまりそこでは、フォイエルバッハの「類的本質」概念の批判的摂取をとおして導き出されたマルクスによる「人間の存在規定」-「類」としての共同を具体的に「現実化」していくような人間の外的な活動-、すなわち、具体的な人間による「社会的な」活動としての「労働」観が働いている。したがって、そこでは、前期メルロ=ポンテイの歴史観が、自然的歴史的状況の「引き受け-取り上げなおし」という実存的契機を機軸とした、いわゆる「トランスナチュレルな場面」であることを明らかにしつつ、さらなる鍵概念として、「社会的なもの」、あるいは「人間的共存の論理」についても検討し、マルクスとエンゲルスにおける「類」概念、あるいは『ドイツ・イデオロギー』などで展開される「複数の諸個人の協働」としての「社会的」という概念を、メルロ=ポンティが、「無記名の実存」という「共通の地盤」としてすなわち「社会的なもの」としてより実存論的に深化させながら捉え返していく過程を問題にした。また、このような<社会的なもの>に対するメルロ=ポンティの視線は、後期にいたると存在論的に捉え返されることとなる。したがってそれらの考察から、メルロ=ポンティの哲学が、いかに<社会的なもの>という視線によって貫かれたものであるのかをあきらかにした。その際、コルネリウス・カストリアディスによる<社会的なもの>への考察との比較検討を行い、これまで主題的に行われたことのない研究領域にも新たに着手した。
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