2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J00475
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉山 清彦 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 大清帝国 / 八旗制 / 中央ユーラシア / 東北アジア / 満洲語 / 侍衛 / ケシク / モンゴル帝国 |
Research Abstract |
本研究は、16世紀末に興起した大清帝国の支配構造と歴史的背景を、支配組織の根幹をなした八旗制の検討を通して、通説にいう最後の中華王朝としてではなく、モンゴル帝国に代表される中央ユーラシア国家の一類型として捉えることを志すものである。本年度は、大清帝国の中央ユーラシア的性格を最も集約的に示すものである親衛隊制度の研究を中心に、成果の公表と史料調査とを進めた。 大清帝国は、一般に国家統治・制度整備面において明朝の科挙官僚制度を全面的に受容したとされているが、帝国の意志決定に関わる政権中枢は、実は国家形成期以来つねに宗室王公と八旗旗人官僚に占められており、その多くは漢語で侍衛と称される親衛隊出身者であった。科挙官僚は、これら八旗有力者合議体制の下で漢地統治にのみ参与を許されていたに過ぎないのである。そしてかかる特質は、旧明朝ではなくモンゴル帝国の支配構造に極めて近似しており、おそらくは同時期のユーラシア諸地域の国家と同様、モンゴル時代に淵源するものと考えられる。以上の論旨の如くなる研究成果を、本年度は日本アルタイ学会(7月、発表)・明清史夏合宿の会(7月、コメント担当)・近現代東北アジア地域史研究会研究部会(9月、発表)・京都大学人文科学研究所中国近世史研究班(10月、発表)において口頭報告し、学界に対し新見解を提起した。このほか、11欄に記載したように書評数篇を発表した。 史料調査としては、大阪外国語大学図書館所蔵満洲語文献の調査・整理に従事し(今後も継続)、海外では、台湾の中央研究院歴史語言研究所において満洲語古文書文献の調査・目録作成作業に当たり、また、国立故宮博物院および中国第一歴史〓案館で史料調査を行なった。定例の研究活動としては、上記京大研究班のほか、東洋文庫清代史研究会に出席して満洲語原史料講読に参加、また、諸専門間の交流・知識涵養を目的として海域アジア史・モンゴル時代史などさまざまな分野の学会・研究会に出席、研究発表・文献講読・討論などに参加した。 以上の活動を通じて、中央ユーラシア国家の一類型として大清帝国を捉えるという本研究の斬新な観点を実証的に提起するとともに、最終年度となる次年度にむけて体系化を進めることができた。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 杉山 清彦: "書評 松村潤著『清太祖実録の研究』(東北アジア文献研究叢刊2)"満族史研究. 1. 134-143 (2002)
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[Publications] 杉山 清彦: "新刊紹介 張徳澤著『清代国家機関考略』 趙令志著『清前期八旗土地制度研究』 王明〓著『遼海文物考辨』 〓書仁著『明清中朝日関係史研究』 趙迅著『納蘭成徳家族墓誌通考』"満族史研究. 1. 156-160 (2002)