2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J00531
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山縣 一夫 大阪大学, 遺伝情報実験センター, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 哺乳動物 / 精子 / 卵 / 配偶子間相互作用 |
Research Abstract |
当研究室では以前、分子シャペロンであるカルネキシンと高い相同性を有する精巣特異的なタンパク質カルメジンをノックアウトした。その結果その精子は形態や運動性は正常であるが、卵子を取り囲む透明帯と結合できないことを見いだした。カルメジンは精子形成過程の細胞の小胞体上に存在するが、小胞体を持たない精子には存在しないことから、このフェノタイプにはカルメジン自身ではなく、カルメジンのターゲットとなる蛋白質が直接関与していると考えられた。そのような中、カルメジン欠損マウスと同様のフェノタイプを示すファーティリンβ欠損マウスが報告された。そこでファーティリンβこそがカルメジンのターゲットではないかと推測し、カルメジン欠損マウス精巣抽出物を用いた免疫沈降をおこなったところ、野生型では見られるファーティリンαとβのヘテロダイマーが見出されず、精子からファーティリンβが完全に消失していることが明らかとなった。そこで、ファーティリンβを欠失したカルメジン欠損マウス精子を用いて、卵細胞膜に対する接着・融合性について詳細に再検討したところ、野生型のものとの間に差は見られなかった。すなわちファーティリンは教科書に書かれているのとは異なり、卵細胞膜との相互作用には無関係であり、むしろ精子と卵透明帯との相互作用に重要であることが示唆された。 さらに、アンギオテンシン変換酵素(ACE)をノックアウトしたマウスでも精子が透明帯に結合しないというフェノタイプが報告された。そこで、ACE欠損マウスの精巣や精子を検討したところ、ファーティリンは野生型と変わりなく精子上に存在していることが明らかとなった。これらの結果より、ファーティリンは異なる3種類の遺伝子欠損マウスで共通に見られるフェノタイプを引き起こす直接の因子でもなく、むしろその因子に対して何らかの影響を及ぼしているにすぎないと考えられた。以上のように、現在においても精子・透明帯、精子・卵細胞膜の相互作用に直接かかわる精子側因子は未同定であると言わざるを得ない。現在、それら因子の探索を行っているところである。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] Siruntawineti, J. et al.: "Occurrence of small, round vesicles in the acrosome of elongating spermatids from a mouse mutant line with partial deletion of the Y chromosome"Journal of Reproduction and Development. Vol.48 NO.5. 513-521 (2002)
-
[Publications] Baba, D. et al.: "Mouse sperm lacking cell surface hyaluronidase PH-20 can pass through the layer of cumulus cells and fertilize the egg"Journal of Biological Chemistry. 277. 30310-30314 (2002)
-
[Publications] Yamagata, K. et al.: "Sperm from the calmegin deficient mouse have normal abilities for binding and fusion to the egg plasma membrane"Developmental Biology. 250(2). 348-357 (2002)