2002 Fiscal Year Annual Research Report
「心の時代」の社会学的分析 セラピー文化の構成とセラピストの専門職化
Project/Area Number |
01J00653
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中川 輝彦 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | セラピー文化 / 職業文化 / 専門職化 |
Research Abstract |
本研究の課題は、セラピー文化の再検討にある。大衆文化として論じられてきたセラピー文化であるが、そのコアには、セラピスト(集団)の下位文化ないし職業文化がある。このことに着目して、本研究では、ベッカーをはじめとするシカゴ学派の職業研究の視点から、セラピストの文化を検討し、その成果をもとに、再度、セラピー文化を検討する予定である。日本のセラピー文化、セラピストの文化の現状、および、その成立について知るために、臨床心理士をはじめとする心理士(集団)の調査を進めている。「現状」の把握のために、心理士からの聞きとり調査、「成立」の把握のために、「心理」という職業の成立および専門職化の経緯を調べている。 昨年度から同テーマで研究を進めているが、現在のところ研究実績は、(昨年度のものも含め)二回の学会発表である。何れも聞きとり調査にもとづくセラピストの文化の現状を報告したものである。本年度の第28回日本保健医療社会学会大会における報告「セラピスト役割の再構成」の主旨は次のとおりである。 同報告では、セラピストによる「セラピスト役割」の定義、役割遂行の経験とそこに孕まれる問題についての了解、この問題に対応するかたちで生成してきた職業文化を、再構成した。セラピストは、心理面接(サイコセラピー、カウンセリング)におけるクライアントとの相互作用は特殊なものであり、自覚しないままに役割遂行能力の低下を招くことがある、と考えている。心理面接は単独で行われ、各セラピストは「孤立して」事にあたっているように見える。しかし、次のような意味で「共同作業」と見ることもできる。自覚せざる能力低下への懸念ゆえに、セラピストは、同業者との接触へと動機付けられる。セラピストの文化は、ピアヴィジョン、ケースカンファレンス、スーパーヴィジョンなどケースをめぐるコミュニケーションを、成員の能力の(相互)チェックおよび回復のチャンスとして位置づけているからである。
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