2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J00696
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木下 光生 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 近世 / 葬送 / 三昧聖 / 堺 / 八尾 / 真宗寺院 / 葬具業者 |
Research Abstract |
今年度は、堺・八尾地域を分析対象地域として、葬送の実態や葬送の担い手の社会的位置を検討した。 堺の研究では、(1)堺周辺には、七堂浜・王子飢・向井領・湊の四ヶ所墓所があり、各墓所には三昧聖が生活し、各墓所を管理していたこと、(2)七堂浜墓所の三昧聖のように、堺市中に居住する三昧聖もいたが、住吉大社祭礼の行列に、七堂浜墓所の火葬の煙がかかっては穢れのもとになるとして、元禄8年に七堂浜墓所も三昧聖も移転させられたこと、(3)向井領墓所のように近代に入ると廃絶する火葬所があった一方、王子飢墓所のように、火災という偶然の事故で、明治42年に個人経営から市営になったものもあり、三昧聖にとっての近代の意味が、同じ堺周辺墓所でも微妙に異なってくること、(4)非人行倒などの諸死体処理では、三昧聖・非人・穢多の間での賤民間分業がみられ、大坂と同様の傾向が見いだせること、といった点を明らかにした。 八尾の研究では、顕証寺・慈願寺という真宗寺院の葬送を分析し、(1)葬送儀礼の面では、葬所が中近世移行期のなかで、「惣ノ火屋」から河原に移る、というように、本願寺門主の葬送儀礼から影響をうけていること、(2)葬送儀礼が、そうした教団内部の本末関係に規定される一方、顕証寺・慈願寺の儀礼を物質的に支えているのは、地域の葬具業者や門徒村々であったこと、(3)一般的に、葬送終了後、葬具は賤民に下付される場合が多いが、顕証寺の場合、葬具が久宝寺村役人にも下付されており、地域住民にとっても地域の中核寺院の葬具をもつことに意味があったこと、といった点を明らかにした。 以上の研究成果は、近日中に研究論文として発表する予定である。このほか、いままでの研究成果を、江川温ほか編『死の文化誌』(昭和堂、2002年)にまとめた。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 木下 光生: "誰が近世日本の葬送を支えたか 第3回 近世葬送を支えた賤民<1>"SOGI. 69. 67-70 (2002)
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[Publications] 木下 光生: "誰が近世日本の葬送を支えたか 第4回 近世葬送を支えた賤民<2>"SOGI. 70. 77-80 (2002)
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[Publications] 木下 光生: "誰が近世日本の葬送を支えたか 第5回 近世の葬具業者"SOGI. 71. 67-70 (2002)
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[Publications] 木下 光生: "誰が近世日本の葬送を支えたか 第6回 近世葬送と賤視・穢れ"SOGI. 72. 69-72 (2002)
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[Publications] 木下 光生: "「近世日本の葬送を支えた人びと」(江川温・中村生雄編『死の文化誌-心性・習俗・社会-』)"昭和堂. 239 (2002)