2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J00825
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
土屋 旬 大阪大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 化学結合性 / 高圧 / 水素結合 / 高圧含水鉱物 / 第一原理計算 |
Research Abstract |
近年,高圧下において新しい含水鉱物δ-AlOOHが報告された.この物質は沈み込む堆積岩スラブの中に存在し,下部マントルへ水を供給する重要な物質であると考えられている.地球科学において重要であると認識されているにも拘らず,このδ相のような含水鉱物の詳細な構造や高圧下での圧縮挙動は十分には解明されていない.実験では求めにくい水素の位置,またその高圧下での圧縮挙動を第一原理電子状態計算を用いて理論的に解明するため,本研究を行った.まず,水素位置に関しては3つの安定な配置が存在することが判明した.2つは非対称な水素結合を含むもの(HOC-I, HOC-II)であり,残りの一つは対称なそれを含むもの(HC)であった.しかし,常圧においても3つの構造間の格子エネルギーの差は非常に小さく,水素の零点振動エネルギーを考慮に入れるとその差は有意なものではないことが判明した.圧縮挙動に関しては実験結果を説明するのは水素結合が対称化されているHC構造であった.また体積弾性率の値に関しては水素結合が対称化されている構造とそうでないものの違いは20%以上あり,水素結合が体積弾性率の決定に重要な寄与をしていることがわかった.またHC構造の体積弾性率が最も実測に近い値が得られた.以上より,このδ相の構造は水素結合が対称化されている(HC)と結論した.また本研究により含水鉱物中の水素結合が圧縮挙動,体積弾性率に非常に重要な影響を及ぼすことが判明した. 以上より本研究の結論は次の通りである.含水鉱物の高圧下での挙動を調べるには水素位置や水素結合の効果を無視することはできない.高圧下では水素位置も変化し,その変化が水素結合の性質も変化させる.その変化は鉱物の圧縮挙動や体積弾性率に重要な影響をもたらすからである.また上記の内容を調べるためには第一原理に基づく電子状態計算を用いたアプローチは有効な手段である.
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Research Products
(1 results)