2002 Fiscal Year Annual Research Report
左右非対称な形態形成に関与する転与因子Pitx2の発現維持機構と機能の解明
Project/Area Number |
01J00928
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
白鳥 秀卓 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 左右軸 / 形態形成 / 転与因子 / Pitx2 / エンハンサー |
Research Abstract |
私は、前年に引き続き、左右非対称な形態形成メカニズムの解明のために転写因子Pitx2の左右非対称な発現のエンハンサー(ASE)のみを欠失させたマウスの解析を行った。Pitx2 ASE欠損マウスは、Pitx2の左右非対称な発現をほとんど消失しており、ASEがPitx2の左右非対称な発現に必要不可欠なエンハンサーであることを証明した。Pitx2 ASE欠損マウスの新生仔の形態は、外見上野生型やヘテロマウスと違いは見られないが、肺、心臓は右側相同を示し、他にも、大静脈、大動脈などの血管走行の左右非対称性や、腸の走行、脾臓の大きさに異常が見られた。しかし、胃、脾臓の左右性や心臓のルーピングの方向など、Pitx2が左側特異的に発現しているにもかかわらず、その非対称性に異常が観察されない器官もあり、左右非対称な形態形成にはPitx2依存性の部分と非依存性の部分が存在することを明らかにした。現在、左右非対称に発現する遺伝子の発現変化をPitx2 ASE欠損マウスやPitx2の上流であるNodalからのシグナル伝達に必要なCrypticの変異マウスで調べ、Pitx2依存性、非依存性それぞれのシグナル経路を明らかにしている。 また、マウス以外の脊椎動物からもPitx2を単離し、ASEを探索した。その結果、ヒトからゼブラフィッシュまでASEに特徴的な配列が保存されていた。さらに、それぞれのASEの活性をトランスジェニックマウスの手法を用いて調べたところ、ほとんどの種のASEで左右非対称な発現の活性が見られ、Pitx2の発現が脊椎動物を通してASEによって制御されていることを明らかにした。 共同研究者として、ノードの流れの方向が左右軸を決定することを明らかにした研究で、左右非対称なシグナル伝達の指標としてPitx2 ASEの活性をlacZレポーターで観察できるマウスを使った実験に協力した(Nature,2002)。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] 野中茂紀, 白鳥秀卓, 西條幸男, 濱田博司: "Determination of left-right patterning of the mouse embryo by artificial nodal flow"Nature. 418. 96-99 (2002)