2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J00941
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
戸渡 文子 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 老人 / 国教会 / 聖職者 / 福祉 / 空間 |
Research Abstract |
本研究の主題は、イギリスにおいて近代国家が福祉の対象としての老人を創造するなかで国教会の果たした役割を明らかにすることである。1830年代から1870年代までを考察の対象とする。平成14年度は、いかなる前提条件のもとで、教区という領域を専門職として支配した国教会司祭にとってその領域内における老人福祉の向上が本質的な要素となったのかという問題を明らかにする作業を行った。科学研究費補助金からは、おもに教会史と女性史に関連する図書、史料の収集に必要なPDAとデジタルカメラを購入した。実施した研究の内容は以下の三件である。第一に、舞台背景として19世紀に特有の教区の世界を明らかにするために、教区のモデルを定義する作業を行った。イギリス社会史、教会史に関連する二次文献を利用して、教区を構成する概念は、一定の領域、司祭、俗人(教区員、教区員以外で領域に帰属する人びと)、その領域を支配する中央の機構の4つであることを説明した。第二に、教会史に関する文献と国教会主教の教区巡察訓示をもとに、1830年代以降は司祭の専門職化が教会当局によってすすめられる過程を探った。第三に、司祭の妻や女性信者が教区における女性たちの活動について書いた史料にもとづき、19世紀には教区員のなかで女性が影響力を持つようになるという問題を提起した。その結果として、司祭が領域の支配を成功させるためには女性信者たちの教会活動の動機や思想を理解することが決定的に重要になるという状況が生まれた。これは教区司祭にとって老人福祉が不可欠の役割となるために最も重要な前提条件となった。
|
Research Products
(1 results)