2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J00979
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
久保 義行 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | トランスポーター / 膜蛋白質 / 遺伝子改変マウス / 拡張型心筋症 / 生体情報分子 / 脳 / 心臓 / 精巣 |
Research Abstract |
私は脳・神経組織に発現しているABCAサブファミリーに注目し、遺伝子クローニングから生理的役割解明までを目指した。新生仔マウス脳において検索を行った結果、4種の新規遺伝子を見出した。これらは、それぞれmABCA5、mABCA8a、mABCA8b、mABCA9であることが明らかとなった。マウス新生仔脳および神経細胞両方に共通に発現する新規遺伝子は、mABCA5とmABCA8bであった。その後、mABCA5の完全長cDNAのクローニングを行った。遺伝子組換えによって、哺乳類発現用ベクターに組み込んだ。mABCA5は1642アミノ酸からなり、疎水性アミノ酸の占める割合は52%であった。また、推定される分子量は185kDaであった。また、予測される構造は12回膜貫通構造であり、細胞質側にNBDを2箇所存在する。ノーザンブロット解析の結果、mABCA5遺伝子転写産物は、精巣、脳、肺に最も多く発現しており、心臓、腎臓に中程度、発現していることが明らかとなった。 また、機能を解明に向けてABCA5ノックアウトマウスの作成・解析を行った。作成に成功したABCA5ノックアウトマウスは正常に分娩され成獣するが、成熟期に入った後、ノックアウトマウスにおいて異常が観察される。具的には、活動性の低下、腹部が膨大した異常な体型、眼球突出が挙げられる。このような状態になったマウスは回復せず、死亡する。検死解剖で、さらに皮下浮腫、腹水滞留、末梢臓器の鬱血、肝臓異常、心拡張が確認された。腹部の膨大に関しては、皮下浮腫がその実体である。肝臓異常が確認できることからも浮腫・腹水の原因は、肝機能低下に伴うアルブミン合成低下によって、血漿膠質液浸透圧が減少したためであると考えられる。 心臓の病理切片を見るとノックアウトマウスでは心室は左右ともに拡張していることから、病態発症機構としては拡張型心筋症の症状に近いとも考えられる。拡張型心筋症については、その発症機構に不明な点が多く、もし、mABCA5が心筋症原因遺伝子の1つであるならば、ABCA5ノックアウトマウスの解析は、心臓疾患の究明と治療に貢献することになるだろう。
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