2002 Fiscal Year Annual Research Report
薬剤排出タンパク遺伝子資源の解析とその発現制御機構に関する研究
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01J00984
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西野 邦彦 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 薬剤排出蛋白質 / 薬剤耐性 / 二成分制御系 / ポストゲノム / 遺伝子発現制御 / 転写制御 / 化学療法 |
Research Abstract |
薬剤排出タンパク質は膜輸送タンパク質であり、抗生物質などに対する多剤耐性の主因である。ゲノム配列解析により、様々な病原感染細菌の染色体上には薬剤排出タンパク質をコードしていると推定されるOpen reading frame(ORF)が数多く存在することが明らかとなってきた。Escherichia coliにおいては37個の推定薬剤排出タンパクORFが存在する。しかし、これら全てのORFが薬剤耐性に関与しているかは明らかにされていなかった。そこで私はこれらのOREが実際に薬剤耐性に関与しているかどうかを調べた結果、20個のORFがE.coliの薬剤耐性化に関与していることを明らかにしてきた。 (1)次に、同定した20個の薬剤排出蛋白質の発現制御の解析を行うことにした。まず、その調節因子として二成分情報伝達系に注目した。二成分情報伝達系は細菌において、主要な環境感知・応答システムとして機能している。これまで、多剤排出蛋白質による薬剤耐性に二成分情報伝達系が関与しているという報告はなかった。しかし、薬剤排出蛋白質の役割が生体防御にあると考えると、この系によって発現制御される排出蛋白質が存在してもよいのではなかろうか。このような考えに基づき、解析を行った結果、私は、EvgSA二成分情報伝達システムが多剤排出蛋白質YhiUVと単剤排出蛋白質EmrKYの発現を調節し、E.coliを多剤耐性化させることを明らかにした。さらに、アレイを用いた解析の結果、EvgSAシステムはE.coliの薬剤耐性のみならず酸抵抗性や高浸透圧抵抗性をも調節していることを見い出した。また、もう一つの二成分情報伝達系BaeSRシステムが多剤排出蛋白質MdtABC(YegMNO)発現調節を行っていることも明らかにした。二成分情報伝達系による薬剤排出蛋白質発現制御は、全く新しい耐性制御メカニズムであり、薬剤排出蛋白質の発現が環境応答による生体防御機構により調節されていることを証明した。 (2)E.coli染色体上には、ゲノム解析の結果、約30種類の二成分情報伝達システムが存在していると推定されている。具体的にはセンサーが30個、レギュレーターが32個である。EvgSA、BaeSR以外にも薬剤耐性に関与する二成分情報伝達系は存在するのだろうか。私は、薬剤耐性に関与する二成分情報伝達系を同定するために、推定された32個の二成分情報伝達系レギュレーター遺伝子を全てクローニングした。そして、各々のレギュレーターを発現させたE.coliに対する様々な化合物の最小発育阻止濃度を測定した。その結果、15個のレギュレーターがE. coliの薬剤耐性化に関与していることを明らかにした。化合物別にみると薬剤排出蛋白質の場合と同様に、デオキシコール酸耐性に関与しているレギュレーターが最も多く、9個がこの耐性に関与していることが分かった。また、4個のレギュレーターが薬剤排出蛋白質の発現を制御していることも見い出した。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Nishino, K., A.Yamaguchi: "EvgA of the two-component signal transduction system modulates production of the YhiUV multidrug transporter in Escherichia coli"Journal of Bacteriology. 184・8. 2319-2323 (2002)
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[Publications] Nagakubo, S., K.Nishino, T.Hirata, A.Yamaguchi: "The putative response regulator BaeR stimulates multidrug resistance of Escherichiu coli via a novel multidrug exporter system, MdtABC"Journal of Bacteriology. 184・15. 4161-4167 (2002)
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[Publications] Hirakawa, H., K.Nishino, T.Hirata, A.Yamaguchi: "Comprehensive studies on the drug resistance mediated by the overexpression of response regulators of two-component signal transduction systems in Escherichia col"Journal of Bacteriology. 185・6(In Press). (2003)
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[Publications] Nishino, K., Y.Inazumi, A.Yamaguchi: "Global analysis of genes regulated by EvgA or the two-component regulatory system in Escherichia coli"Journal of Bacteriology. 185(In Press). (2003)
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[Publications] 西野邦彦, 山口明人: "細菌ゲノムに潜む薬剤耐性因子(Postgenomic approach for bacterial drug resistance factors factors based on drug exporters and two-component signal transduction systems)"日本細菌学雑誌. 57・2. 453-464 (2002)