2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J01183
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐伯 昭紀 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高濃度溶質 / 捕捉反応 / 隣接効果 / サブピコ秒パルスラジオリシス / モンテカルロシミュレーション / ジェミネートイオン再結合 / 放射線誘起超高速反応 |
Research Abstract |
1.高濃度溶質存在下でのカチオンラジカルの挙動の測定 高濃度の溶質が存在する場合、低濃度下よりも反応が急速に進行するので、高い時間分解能だけでなく良いSN比も要求される。昨年行ったSN比の大幅な改良により、このような超高速捕捉反応を測定することが可能になったので、直鎖炭化水素を溶媒に、カチオン種を拡散律速で捕捉するアミン化合物を溶質として用い、放射線誘起超高速ダイナミクスの直接観測を行った。 2.統計的手法及びモンテカルロ法を用いた解析 低誘電率溶媒の場合、入射電子線によるイオン化によって生成されたカチオンラジカルと電子はピコ秒の時間領域で拡散とクーロン引力によってジェミネートイオン再結合する。しかし、拡散律速でカチオンラジカルとのみ反応する捕捉剤が存在する系では、1回の衝突によってジェミネートペアの片方であるカチオンラジカルが捕捉され、溶質カチオン-電子のペアが生成する。捕捉剤濃度が薄い場合は、この捕捉反応は1次の速度定数で記述されるが、今回行った高濃度での実験では、1次の速度定数で予想されるよりも大きな初期値の減少が観測された。減少の原因として2つの高濃度効果を考えた。1つ目は、溶質が入ることによって溶媒分子の数そのもの減少する効果である。2つ目として、高濃度であれば、溶質分子は反応初期において溶媒カチオンラジカルと隣接している可能性が高くなる要因(隣接効果)を考えた。この場合、拡散を必要とせずに反応することができ、通常の1次の速度定数で表すことは適切でない。これら2つの効果を見積もるため、確率論に基づいた解析的なモデルを作成し、実験値との比較を行った。また、分子の内部エネルギー(結合軸中心の回転)、分子間ポテンシャル(レナード・ジョーンズポテンシャル・クーロンポテンシャル)を考慮したモンテカルロ法を用いて溶質が混合した溶液を再現し、そのときの隣接する割合を計算した。両者の手法とも、実験で得られた初期値の減少を説明することができた。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] A.Saeki, T.Kozawa, Y.Yoshida, S.Tagawa: "Study on Radiation-Induced Reaction in Microscopic Region for Basic Understanding of Electron Beam Patterning in Lithographic Process(II)"Japanese Journal of Applied Physics. 41. 4213-4216 (2002)
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[Publications] T.Kozawa, A.Saeki, Y.Yoshida, S.Tagawa: "Study on Radiation-Induced Reaction in Microscopic Region for Basic Understanding of Electron Beam Patterning in Lithographic Process(I)"Japanese Journal of Applied Physics. 41. 4208-4212 (2002)