2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J01235
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
斎藤 修啓 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 教育史 / 博物館史 / 明治期 / 社会教育 / 教育博物館 / 棚橋源太郎 / 生活改善運動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、学校教育と地域社会を結びつける機関として、学術研究の発展を公開する機関として、その今日的役割が期待されている博物館の教育活動を歴史的文脈から考察することである。本年度の研究課題は、日本の博物館界に重要な足跡を残した棚橋源太郎の主要な実践の場であった東京教育博物館での活動、彼の博物館論の形成過程の分析を通じて、近代日本の博物館における教育活動の特質を解明することであった。そこでとくに、棚橋の博物館実践活動が彼の社会教育論にどのように現れていたのかを分析した。 明治期の終わりから大正期の半ば頃まで、つまり戦間期の大正デモクラシー形成・高揚期において、棚橋は彼の社会教育論で、主として博物館事業や生活改善運動に注目していた。棚橋は東京教育博物館での活動の中で、文部省政策に呼応して通俗教育のための特別展覧会を開催するようになった。その特別展覧会の内容が発展的に生活改善運動へつながっていった。 棚橋の博物館に関する論調は、他の社会教育論者の論法と同様に、欧米の博物館を理想のものとして、それにいかに近づけるかということに力点が置かれていた。とりわけ自然科学の博物館の充実が目指され、それによって「一般民衆の啓発」が意図された。 生活改善に関する論調でも、衣食住にはじまる日常生活、社会生活について、海外の先進的な活動を取り入れることが目指された。当時の社会状況に対する危機感から、棚橋は生活改善を通して国力を高めようとしていた。そのために社会教育関係者ばかりでなく、学校教育関係者も生活改善運動に関わる必要を論じていた。 この研究成果の一部は、論文「戦間期における棚橋源太郎の社会教育論-大正デモクラシー形成・高揚期の博物館論と生活改善論-」にまとめられた。
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