2002 Fiscal Year Annual Research Report
膜融合を利用した膜蛋白質の結晶化及び高分解能X線結晶構造解析
Project/Area Number |
01J01601
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
日野 智也 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 膜蛋白質 / 結晶化 / X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
本研究で用いている膜融合を利用した結晶化法では膜蛋白質と脂質からなる均一な大きさの膜小胞を形成させることが重要である。そこで、膜小胞形成原理を調べることを目的として光捕集クロロフィルa/b蛋白質(LHC-II)が形成する球殻構造体のX線結晶構造解析を行った。X線回折データの自己回転関数から、LHC-IIの球殻構造体は正20面体対称性を持つことを証明した。これまでに報告されているLHC-II三量体の構造をもとに、結晶学的なR値が39.2%となる正20面体構造モデルを作成することに成功した。このモデル構造からLHC-IIの球殻構造体では、親水性表面のストロマ側が正20面体の外側を向いていることを見出した。また、二重球殻モデルによる低分解能領域でのX線回折強度のシミュレーション実験から、LHC-II正20面体構造には、厚さ20Åの、電子密度が低い膜状領域が存在し、正20面体構造の蛋白質間には脂質及び界面活性剤が膜構造を形成していることを明らかにした。 本研究により、これまでに報告されていた光駆動プロトンポンプであるバクテリオロドプシン以外の膜蛋白質においても、均一な膜小胞構造を形成しうることを見出し、膜蛋白質・脂質複合体が自己集合し、正20面体構造をとることを初めて証明した。また、LHC-IIとバクテリオロドプシンの膜小胞は共に膜小胞の外側に負に帯電したアミノ酸が高密度で存在することから、膜蛋白質の膜小胞形成には、膜蛋白質の膜面に関する非対称的な電荷分布が重要であることが示唆された。
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