2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J01735
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
堤 真紀子 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | メダカ / トランスポゾン / 転位酵素 / 培養細胞 |
Research Abstract |
メダカTol2は脊椎動物で転位活性を持つ、唯一のhATファミリーのトランスポゾン(転位因子)である。従って、Tol2はその転位機構やホストに与える影響、そしてそれ自身の起源についての研究もさることながら、トランスポゾンを用いた遺伝子taggingに応用できる期待が大きい。本研究は、Tol2の研究を通して、それを用いた遺伝子改変系を確立することを目的としている。 Tol2の転位に重要な塩基配列を決定するにあたり、様々な条件下でのTol2転位頻度をより正確に求めるため、既に構築した、In vivoでの転位頻度を測定する系を改良した。その結果、Tol2から転写される長さの異なる2種類のmRNAの内、長いmRNAは転位を活性化し、短いmRNAは転位を阻害することが判明した。このことは、短いmRNAの翻訳産物が、転位を阻害するリプレッサーの役割を果たしていることを示唆する。大腸菌やトウモロコシのトランスポゾンでは、短い転位酵素が、完全長の転位酵素の働きを阻害して転位を抑制する事が知られている。メダカの場合も、転位酵素とそのリプレッサーをコードすることにより、ゲノム内での転位頻度を調節しているのかもしれないと考えている。 トランスポゾンがそれ自身の転位頻度を制御する手段の一つが、転位酵素の発現量調節である。Tol2の場合は活性化と阻害という逆の機能を持つ2種類のmRNAを発現することによって、転位を制御しているのかも知れない。しかし、どちらのmRNAも発現量が非常に低い為、メダカ細胞における量比が測定できない。このため、これら2種類のmRNAのプロモーター領域を、レポーターとなるルシフェラーゼ遺伝子につないでルシフェラーゼ活性を測定することにより、プロモーター活性を推測しようと試みた。まず転写開始点を含むプロモーター候補の塩基配列をレポーターベクター上に組み込んだ。それをメダカ培養細胞に導入して、ルシフェラーゼアッセイを行った。その結果、どちらのmRNAも、そのプロモーター活性は非常に低いことが示された。とりわけ長いmRNAのプロモーター活性が低かった。一方、短いmRNAのプロモーターは、長いmRNAと比較して最大5.8倍の活性が現れた。以上のことから、メダカ細胞内では、転位酵素よりもリプレッサーの方が多く発現している可能性が示唆される。Tol2の自然界での転位頻度が低いことの一因は、このためかもしれない。
|