2003 Fiscal Year Annual Research Report
アジャンター壁画の研究-アジャンター石窟寺院の造営年代に関する研究の一環として-
Project/Area Number |
01J01799
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
福山 泰子 名古屋大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アジャンター / 石窟 / ヴィシュヴァンタラ本生 / シンハラ譬喩物語 / 碑銘 |
Research Abstract |
本年度は、8〜9月にかけて、研究対象のアジャンター石窟のほか、宮治昭教授の調査に同行し、アジャンターとほぼ同時代に造営されたバーグ石窟およびグジャラート州に残る石窟寺院を調査した。アジャンター石窟では、前年度に引き続き、壁画の描起し図(線図)の作成を行い、また僧院窟を中心に、天井画の区画構成や装飾文様の傾向、形式変化に注目し、アジャンター石窟の全体的な発展過程について一応の見通しを持った。 昨年度の調査における成果として「第17窟「ヴィシュヴァンタラ太子本生」図の物語表現について」と題し、第56回美術史学会全国大会(於:関西学院大学)において発表した。本発表では、未詳場面の同定のほか、物語表現において重要な役割を担っている建築物や山岳モティーフに注目し、その形態や機能を物語展開の上から論じた。また、本年度の調査では特に、昨年までの修復用足場が撤去され、同窟「シンハラ譬喩物語」図の全体の線図作成が可能となり、大画面壁画における表現上の特質として色面の活用や幾何学形体が生み出す画面上におけるリズムといった効果を明らかにした。本図に関する研究成果は、2004年第49回国際東方学者会議(5月21日)において発表の予定である。 論文としては上記の美術史学会全国大会における発表内容を加筆し、「アジャンター第17窟「ヴィシュヴァンタラ本生」図の物語表現について」と題する論文を『美術史』に投稿中である他、「アジャンター後期石窟における碑銘について」と題する論文を『名古屋大学博物館報告』に発表した(2003年12月発行)。本稿では、アジャンター後期石窟に残る碑銘を中心に、アジャンター全盛期の寄進銘、壁画に付属した碑銘、そしてアジャンター衰退期の小規模寄進に伴われた碑銘の三つに分類し、それら碑銘の抱える問題を、碑銘内容だけではなく、石窟の造営過程や石窟を荘厳する彫刻、壁画の様相を交えつつ論じた。
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Research Products
(1 results)