2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J01810
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
江成 祐二 名古屋大学, 理学研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 素粒子 / 高エネルギー物理 / 加速器 / チェレンコフ光 / 粒子識別 / CPの破れ |
Research Abstract |
本研究の目的は、チェレンコフ光を用いた新型粒子識別装置TOPカウンターを実用段階にまで開発することである。当面の目標としては、現在つくば市にある高エネルギー加速器研究機構にて稼動中のBファクトリー実験の次期システムにTOPカウンターを搭載することとしている。この実用化に向けて行った本年度の研究実績について述べる。 前年度までの研究において、(1)TOPカウンターの基本的な原理面の理解、(2)Belle検出器に搭載に向けてのTOPカウンターの形状に関するの読み出しの抜本的改良、について大幅な進展があった。その特徴を最大限に生かし、Belle検出器に導入するためには最適な構造を探らなければならない。 本年度の研究成果の1つは、このシミュレーション・プログラムを完成させたことである。このシミュレーションには粒子と物質の相互作用の再現には詳細に計算されているGEANT3を使い、チェレンコフ光の輻射、伝播部分は波長依存性を考慮し、独自のプログラムを作成した。また、実用時と条件を出来るだけ等しくする為に磁場や、設置位置、設置角度等も詳細に再現した。また、一番重要なのはバックグラウンドの再現であるが、これは現在のBelle検出器で稼動中の検出器から見積もったことにより、かなり現実性の高い評価を可能とした。その結果は、TOPカウンターの形状を最適な形にすることにより、現状のBelle検出器の能力を大幅超える能力、運動量3.5GeV/c以下で3.5σ以上のπ/K識別能力を有する事を確認できた。 本年度のもう一つの研究成果は、光検出器に関するものである。TOPカウンターの実用化には光検出器開発が重要な要素である。現在ロシアのBINP研究所、浜松ホトニクス等と連絡をとりながら、MCPPMTの開発を行っている。BINP研究所とは、研究対象をシングルアノードMCPPMTに絞り、MCPPMTの基本構造及び性能の理解、また長期間安走性、寿命など非常に基本的なことに力を入れて研究を進めた。また、浜松ホトニクスではマルチアノードMCPPMTを対象にして研究を行った。この結果、マルチアノードにしても光強度感度、時間特性に関する性能、またこれらの一様性は非常に良く、実用上にまったく問題ないことを明らかにした。また、実用化の唯一の問題点はクロストークにある事を明らかにすることが出来た。このMCPPMTに関する研究をまとめたものをNucl.Inst.Meth.に投稿中である。
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