2003 Fiscal Year Annual Research Report
地方改良運動期における模範村の影響と町村自治の研究
Project/Area Number |
01J01829
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
田口 有希夫 東京農業大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 地方改良運動 / 農村振興 / 模範村 |
Research Abstract |
研究題目『地方改良運動期における模範村の影響と町村自治の研究』に沿い、平成15年度は、内務省が明治30年代から展開した地方改良事業に関する文献調査を行った。また、地方改良運動の普及により、町村を独自的に進展させようと試みた村役場吏員の事例について調査を行った。 模範村に関しては、特に明治の三大模範村と称される静岡県賀茂郡稲取村、宮城県名取郡生出村、千葉県山武郡源村についての調査を行った。地方改良運動は近代国家における自治制度の確立を促進するため、政府中央により全国町村に模範村の優良事例を普及することで町村の行財政を改革しようと試みた事業であった。明治の三大模範村はその中でも町村自治の改善に独自的にまた個性的に対応し、当時の町村では大変優秀に行政町村の運営を行った。これらの町村の運営が、間接的ではあるが、内務省が明治40年代から展開する地方改良運動に活かされた。地方吏員の活動に関して、本研究では岩手県東磐井郡長坂村(現東山町)の吏員、鈴木東蔵について現地調査を行った。地方改良運動の影響により、各県で講習会が開催されたが鈴木も岩手県が主催する地方改良講習会を受けている。実際、吏員等には行政的な改善、地方自治の方針等が説かれた。鈴木はこれらの行政的な改善だけでは町村の経営は好転しないと考え、町村独自の産業を興そうと自ら砕石工場を設立し、同地域の発展を試みた。この鈴木の事例は、吏員時代の活動については地方改良運動においての標準的なものであるが、その後の産業振興に関しては独自的なものであり、地域の振興に関しては行政的な町村自治の改善と経済的な地域の振興が必要であることを明らかにした。つまり、地方改良運動による行政町村の町村自治の改善は、経済的な側面の後退(経済的基盤の惰弱)によりその成果は半減したものと言える。 平成15年度は、模範村および地方改良運動全体に関する具体的な知見について進めることができた。今後は、これらの個別具体的な知見を総合し、博士論文として地方改良運動が同時代においてどのような意味を持つものであったのか、総合的な分析を行い、研究成果を発表する予定である。
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