2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J02027
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
井町 智彦 金沢大学, 総合メディア基盤センター, 助手
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Keywords | ワイヤアンテナ / 実効長 / 科学衛星 / レオメトリ実験 / 絶縁被覆 |
Research Abstract |
本研究では、水中に配置したアンテナに既知の電界を印加してその出力電圧よりアンテナの実効長等を測定する「レオメトリ実験」を軸に、低周波におけるワイヤアンテナの実効長に対する解析に取り組んできた。この研究のモチベーションは、科学衛星に搭載されたワイヤアンテナの実効長の扱いが、波動観測においてL/2、静電場観測においてL(ここでLはアンテナの全長)と、互いに矛盾する値を取ることに起因する。そして3年間に渡る研究の結果、この矛盾はかなりの部分か明らかになった。 本研究では、低周波におけるワイヤアンテナの実効長周波数特性に対し、レオメトリ実験による実測と、その結果に対する定量的な理論的評価を行なった。科学衛星の電界観測用ワイヤアンテナは、一般的にワイヤの先端よりある程度の部分が剥き出しで、その他の部分には絶縁被覆が施してあり、ワイヤ根元の衛星構体に近い部分には、衛星自身から放射されるノイズの混入を軽減するための、金属メッシュスリーブが施してあるのが一般的な形態である。そこで本研究の解析対象としては、上記を模擬したものとして、1)ワイヤ側面を絶縁被覆し先端を被覆しないワイヤアンテナを用い、その比較対象として2)絶縁被覆が全くないアンテナ、および静電界観測を模擬した、3)ワイヤ先端に球プローブを付けたものの、計3種類を取り扱った。その結果、1)については実際の衛星と同じく、静電界に近い極低周波では実効長はほぼLとなり、周波数が上がると、ある周波数で急激に遷移してL/2になるという結果が得られた。3)についても特性は同様となったが、この場合遷移周波数は1)の場合よりも高く、また高周波で安定する値もL/2より若干大きなものとなった。2)については実効長の周波数依存性は見られず、L/2であった。これらの結果から定性的に考察すると、原因として考えられるのは絶縁被覆の静電容量である。すなわち、低周波では被覆のインピーダンスは極めて大きくなるためアンテナはワイヤ両端の電位差を観測し、周波数が上がるとそのインピーダンスが低下し、アンテナはワイヤ中点間の電位差を測定しているものと考えられる。この仮定に基づいて等価回路より理論式を作成し、実験に用いたアンテナや水のパラメータを代入して周波数特性を計算すると、実験結果にほぼ完全に一致する結果が得られた。従ってこの理論は、実験による観測と、定量的な理論計算の両方によって裏付けられたと言える。この理論に基づき、実際の科学衛星「GEOTAIL」について等価的なパラメータを求め、実効長の周波数特性を計算したところ、遷移周波数は周辺プラズマのインピーダンスに依存して数Hz〜数10Hzとなることが分かった。これは、静電場観測班(EFD)とプラズマ波動観測装置(PWI)が担当する周波数帯域の境界にほぼ一致する。 本研究の成果については、国際学会を含む多数の学会で報告している。また、現在はノイズ防止スリーブの影響についての解析が進行中である。
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