2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J02093
|
Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
高久 康春 国立遺伝学研究所, 個体遺伝研究系, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 細胞選別現象 / 差次粘液仮説 / 細胞接着 / 細胞運動 / 再生 / ヒドラ |
Research Abstract |
複数の細胞種から構成される組織を解離後培養すると、集合体のなかでそれぞれの細胞が選別され、元の組織構造が再構築される。この「細胞選別現象」は、多種多様に分化した細胞が、一つの個体の中で秩序だった配列を保つための基本的な性質であると考えられる。これまでにその機構として、同じ接着性をもつ細胞どうしの「選択的接着説」、あるいは細胞間の接着力の量的な差により、接着度の高い細胞が熱力学的過程として集合体の内側に位置する「差次接着仮説」が支持され、細胞の接着性の質的・量的違いが細胞選別を引き起こすと考えられてきた。 これに対し我々は、細胞の運動性が接着性以上に重要である事例をはじめて明らかにした(論文投稿中)。ヒドラは個体を単一細胞に解離しても、解離細胞再集合体から、細胞選別を経て完全な形態および機能を回復する。この過程で内胚葉性上皮細胞は高い運動性示し塊の内側へ移動する。しかし、接着力を保持したままサイトカラシン処理により運動性を阻害すると、細胞選別は起こらなくなり、結果として再生できない。内胚葉性上皮細胞はファロイジンで強く染色される仮足様構造をもち、細胞選別の駆動力として、アクチンによる運動機構の存在が強く示唆された。 さらに最近我々はヒドラ頭部再生不能系統reg-16の解析から、このような細胞の移動・選別に部域的な違いがあることを明らかにした。ヒドラが解離細胞再集合体から再生できるのは、個々の細胞がシステムの中でその相対的位置(位置価とよぶ)を認識して頭の細胞になったり、足の細胞になったりするからである。これはヒドラに位置価調節機構が存在し、実はこれが強力な再生力の理由と考えられる。reg-16は、頭・足までの位置価が近い細胞どうしの解離再集合体からは再生するが、細胞を体軸広範囲から集めると、生存率の著しい低下、あるいは再生に有意な遅れがみられる。一方野生型はどんなに離れた位置価をもつ細胞を用いても容易に再生する。このような観察から、reg-16は位置価のギャップを埋められないと推論され、同時に野生型には、これまで全く未知な、極早い位置価調節機構の存在が示唆された(現在論文作成中)。
|
Research Products
(1 results)
-
[Publications] 針山 孝彦, 弘中 満太郎, 堀口 弘子, 高久 康春, K.Vanhoutte: "タマムシを用いた構造色の起源と、構造色弁別能の行動学的解析"Stractural colour. In press. (2003)