2003 Fiscal Year Annual Research Report
甲殻類の脱皮抑制ホルモンの作用に関する生理・生化学的研究
Project/Area Number |
01J02204
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
仲辻 晃明 甲南大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 脱皮抑制ホルモン / エクジステロイド / 甲殻類 / 脱皮 |
Research Abstract |
甲殻類の脱皮は,Y器官から分泌されるエクジステロイドにより誘導される.また,エクジステロイドの分泌は,眼柄内のX器官-サイナス腺系から分泌される脱皮抑制ホルモン(MIH; Molt-inhibiting hormone)により抑制的に調節されていることが平成13年度と14年度の研究結果より明らかになった.しかし,脱皮前期中盤にエクジステロイド分泌量が急激に増加することから考えると,Y器官がMIHによる抑制的な調節のみで制御されているとは考えにくい.そこで平成15年度は,Y器官の促進的調節について着目し研究を行った. まず,Y器官を促進する物質を検索するために、種々の神経節の抽出物を体外培養したY器官に作用させ,エクジステロイド分泌を測定した.その結果,脳の抽出物をY器官に作用させるとエクジステロイドの分泌が増加した.この結果は,脳内にY器官からのエクジステロイドの分泌を促進的に調節する因子が存在することを示唆している.また,脳抽出物は,脱皮前期前半から中盤のY器官にのみ特異的に作用した.この結果は,脱皮前期前半から中盤のエクジステロイド分泌量の増加には,脳からの促進的な調節が関与していることを示唆している. 次に,Y器官促進因子がどのような物質かを調べた.Y器官促進因子が水溶性なのか脂溶性なのかを調べるために,脳抽出抑を水層と有機溶媒層に分配した.その結果,Y器官促進活性は水層にみられた.また,プロテアーゼで処理した脳抽出物をY器官に作用させてもエクジステロイド分泌促進活性はみられなかった.さらに,限外濾過によりY器官促進因子は分子量は3000以下,熱処理にも安定であるということも明らかにした.以上の結果から考察すると,Y器官促進因子は低分子のペプチド性物質である可能性が高い.現在,脳抽出物からY器官促進因子の精製を試みている.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] T.Nakatsuji, H.Sonobe: "Measurement of molt-inhibiting hormone titer in hemolymph of the American crayfish, Procambarus clarkii, by time-resolved fluoroimmunoassay"Zoological Science. 20. 999-1001 (2003)
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[Publications] T.Nakatsuji, H.Sonobe: "Regulation of ecdysteroid secretion from the Y-organ by molt-inhibiting hormone in the American crayfish, Procambarus clarkii"General and Comparative Endocrinology. 135. 358-364 (2004)