2003 Fiscal Year Annual Research Report
道路交通事故問題を対象としたリスクに関する帰責の形式の比較社会学的研究
Project/Area Number |
01J02282
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
小山 雄一郎 東京都立大学, 人文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 道路交通事故問題 / 段階的運転免許制度 / 事故惹起リスク / 危険運転致死傷罪 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に引き続き欧米圏の道路交通事故問題に関する諸制度に関する資料や事例を収集した。特にアメリカで普及しつつある段階的運転免許制度(Graduated Driver Licensing System)については、制度の施行経緯や実態からその社会的な効果に至るまで幅広いレビューを行った。同制度は、事故惹起リスクの高い初心運転者に対して限定された運転環境を段階的に設定し、そうした環境下で運転経験を積ませることによってリスク低減を実現するものであるが、そのシステムは、行政官庁だけではなく運転者の家族や学校といった様々な組織・集団の連携によって運用されていた。これは事故リスクを社会的連関によって低減させるという極めて興味深いものであり、現在、免許制度を中心に日本との比較社会学分析を進めているところである。 また、法実務家を中心とする「交通法科学研究会」という研究グループとの共同作業という位置づけで、2001年12月に施行された危険運転致死傷罪の運用状況に関する事例調査および既存統計分析を行った。前者については、事案を担当した弁護士に対して調査票を用いた半標準化調査を行った後、さらにデプス・インタビューを行った。後者については、公表されている警察庁統計を中心に、現時点での危険運転致死傷罪施行の事故抑止効果を検討した。同罪の運用状況に関しては、その適用基準の他、危険運転行為および故意の認定方法、被害者・遺族感情の過剰な反映といった問題点が浮かび上がった。また警察庁統計によると、過去2年間で危険運転行為の一類型である飲酒運転とそれによる死亡事故件数は大幅に減少したが、それは危険運転致死傷罪という刑事罰ではなく、道交法改正による行政罰の重化によるところが大きいのではないか、ということが推察された。この結果の社会学的含意については現在検討を進めている。
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