2002 Fiscal Year Annual Research Report
道路交通事故問題を対象としたリスクに関する帰責の形式の比較社会学的研究
Project/Area Number |
01J02282
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
小山 雄一郎 東京都立大学, 人文学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 道路交通事故問題 / 責任実践 / 実況見分 / ストリート・レベルの官僚制 / 事故調査制度 / 運転者教育 / 厳罰化 |
Research Abstract |
今年度は、まず昨年度に引き続き、日本の道路交通事故問題を分析するための理論的枠組みの構築を進めるとともに、具体的な問題に対する事例分析の一部として、「過失と原因をめぐるポリティクス-道路交通事故における「実況見分」について-」という論文を発表した。前者については、法哲学における責任理論の研究(瀧川裕英「責任の意味と制度(1)〜(4)」他)を主に応用し、交通事故問題をめぐる各制度が運用される過程を、未来責任実践/過去責任実践とその構造的把握という観点から描くことを目指した。予定が遅れているが、この理論的枠組みに関する論文を現在執筆中である。また後者については、日本における「実況見分」という制度的手続きとその運用過程を、ストリート・レベルの官僚制という概念を基点としながら考察し、実況見分過程には様々なバイアスがかからざるをえないにもかかわらず、調書のデータが"客観的"なものとして社会に流通してしまう結果、日本では事故当事者への帰責だけが強調される社会的構造が維持されてしまうことを明らかにした。(博士論文など)最終的には、この事例分析と先の理論的枠組みを接続することが目指される。 次に、欧米圏の道路交通事故問題に関する諸制度については、引き続き事故調査制度の関連知見を収集した他、運転者教育に関する制度などについても調査を進めた。工学的な専門知識をもった個人(経営)の事故調査員とその組合の存在(イギリス)や、正規の免許を取得するまでにいくつかのプロセスを設定した段階的免許制度(アメリカ、ニュージーランドなど)など、社会的リスクとしての交通事故(問題)への対処を比較社会学的に検討する上で有用な情報を得ることができた。 その他、法実務家を中心とする「交通法科学研究会」という研究グループに参加させてもらい、そこにおいて交通事故問題に関するヒアリングを行うとともに、日本における交通事故事件に対する厳罰化(危険運転致死傷罪の創設など)の趨勢について共同で検討を行った。
|
Research Products
(1 results)