2003 Fiscal Year Annual Research Report
出島(長崎)における19世紀の気象観測記録を用いた気候変動の解析
Project/Area Number |
01J02380
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
財城 真寿美 東京都立大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 気象観測記録 / 19世紀 / 気候復元 / 気候変動 / 国際情報交換 / データベース / 長崎 / オランダ:ドイツ:イギリス |
Research Abstract |
1.19世紀の日本における気象観測記録の収集・整理 ・気象庁観測時代以前すなわち19世紀の日本における気象観測記録の収集 日本の5地点(東京・横浜・大阪・神戸・長崎)における気象観測記録が明らかとなった.長崎におけるオランダ人医師らによる気象観測は,当時の医学教育の一貫として学んだ気象学の影響があったと思われる.また,東京・大阪で日本人の天文学者によって行われた観測は蘭学の影響を受けていた.また,開港以降の横浜・神戸での気象観測は,軍事的な要素が強い. ・観測記録の補正均質化 「補正」作業は,現在の気象観測値と質をそろえることである.まず,気温・気圧データ双方について,現在の使用単位(℃・hPa)に換算し,統一した.また,気圧に関しては,各観測記録にある記述を参考にして,温度補正・重力補正・海面更正の必要の有無を検討し,それぞれの補正を行った.さらに,一定の差が認められるに期間についても補正値を算出し,補正の前後で有意な差が検出されなかった.「均質化」は,観測地点の高度移動や,観測記録ごとに異なる観測回数・時刻などによって発生するデータ間の差をなくし,月平均値レベルで連結可能にするための作業である.高度の移動に関しては,0.6℃/100mの気温減率を用いた.また,観測回数・時刻によって生じる差は,月ごと・観測スケジュールごとに補正値を算出し,それを適用した. ・観測データと日記による推定値の比較 日記の天候記録から復元した東京(7月)と長崎(1月)の気温データとの比較を行った.両者のデータの変動傾向は類似しており,東京の気温で相関係数r=0.72,長崎の気温はr=0.63であった. 2.19世紀の気象観測記録を用いた気候変動解析 ・日本西部における気温の代表値の算出 断片的な19世紀の気象観測データを重ね合わせることによって,それを日本(西部)の平均的な値(West-Japan Temperature:WJT)として解析に適用した.19世紀中頃が19世紀末に比べてやや温暖な傾向にあることが分かった.季節別では夏・秋季にその特徴が顕著である. ・19世紀の気圧配置パターンの復元 東京・長崎の二地点における気温・気圧を指標として,過去の気圧配置パターンを推定することを試みた.1880年代以前の寒冷な冬季の気圧配置パターンの出現確率が60%と高く,1880-1901年は寒冷な夏季タイプの頻度が高く顕著であり,季節による傾向の違いが認められた.
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