2002 Fiscal Year Annual Research Report
国際移動過程における在日中国人の「滞在者」アイデンティティに関する研究
Project/Area Number |
01J02459
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
坪谷 美欧子 立教大学, 社会学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 在日中国人 / 滞在者(sojourner) / アイデンティティ / 準拠集団 / 新中間層 |
Research Abstract |
1.就職者・研究者を対象にしたアンケート調査の分析 2.在日中国人の「滞在者」アイデンティティ・準拠集団・階層意識に関する聞き取り調査(地方都市および首都圏在住の就職者・研究者15人) 1.調査結果によると、かれらの滞日期間は10年以上と長く、すでに高い割合で日本永住資格や国籍を保有していた。同時に将来中国に帰ると答えた者も多いのだが、あと何年くらいで帰るかという具体的なめどについては明らかにされていない。帰国する場合の中国とのつながりには、仕事上や個人的な「コネ」が挙げられていた。一見具体的なめどが立っていないように見えるが、個人的なネットワークによるつながりを維持する様子は、きわめて「中国人らしい」傾向といえるだろう。このような滞在への態度からは、N.ウリエリの「永続的ソジョナー」(permanent sojourner)のような、「滞在者」と「定住者」の中間的な概念が必要であることが示された。 2.「永続的ソジョナー」としてかれらが有する準拠集団は、中国に住む中国人の友人、日本留学する中国人、日本人(同級生・会社の同僚)と多元的で、かつ「状況」や「場」に応じてそれぞれ異なる集団が想定されていることがわかった。ただしここで注意すべきは、それぞれの準拠集団が必ずしも実在するものであるとは限らない点である。かれらの語りの「中国(の大学・会社など)」「日本(の大学・会社など)」(時には)「欧米」は、現実集団ではなく個人が体験したものから作り上げられた、いわば「バーチャル(virtual)な」集団も含まれている点に注目すべきである。 かれらの日本でホワイトカラーの「サラリーマン」や「(有名)大学の教員」としての生活、そして女性に見受けられる「主婦化」傾向などからは、「保守化」していく可能性も考えられる。一部には、日本にいる他の中国人集団(エスニック・カテゴリー)と比較して差別化やエリート意識を思わせる発言もみられる。だが、それが単なる日本社会へ同化を促すと結論づけることはできない。今後は階層の視点も取り入れ、トランスナショナルな「新中間層」としての中国人の分析を予定している。
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Research Products
(1 results)