2002 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト染色体複製関連因子(ORC1)の人為的発現制御技術を用いた細胞内機能の解析
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01J02537
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
巽 康年 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ヒト染色体複製 / ORC1の過剰発現 / 蛋白質の量的制御 / S期チェックポイント |
Research Abstract |
本年度は、ヒトORC1蛋白質量が細胞周期で変動することに着目し、ORC1蛋白質の量的制御の詳細とその意義について以下の知見を得た。 1.ヒトORC1の発現時期の詳細の解析 ORC1の発現時期をBrdUの取り込みと比較したところ、ORC1の染色像はG1後期からS期初期の細胞で強く観察された。しかし、ORC1の染色像はBrdUの染色像とほとんど重ならないこと、S期中期以降の細胞ではORC1のシグナルはほとんど検出されないことから、ORC1はDNAが複製する直前にDNA複製の場から速やかに無くなることが示された。 2.ORC1蛋白質の過剰発現細胞株の解析 ヒト293細胞でFlag-ORC1蛋白質を様々なレベルで発現する細胞株を樹立した。まず、Flag-ORC1蛋白質は恒常的プロモーターで発現するにも関わらず、内在性のORC1蛋白質と同様に、細胞周期で量的に制御されることを見いだした。これは、ヒトORC1蛋白質量が、蛋白質の分解系によって制御されていることを示唆するものである。さらに、ORC1の発現量に応じた細胞の表現型の解析を行った。その結果、ORC1が過剰に発現するとS期の進行に支障を来すこと、またHUやチミジン等によるS期チェックポイント停止が働きにくくなることを見いだした。 3 ORC1蛋白質の分解に関与する部位の同定 ORC1蛋白質の分解に関与するドメインを検索するために、欠失変異を導入したORC1蛋白質を発現する細胞株について、欠失ORC1蛋白質のHU依存的な分解を調べたところ、ORC1の中央のごく短い領域(325-510)でも分解されることが示唆された。 上記の結果から、ヒト細胞においてORC1蛋白質量は、蛋白質の分解系によって細胞周期で厳密に制御されていること、また過剰に存在すると細胞周期およびS期チェックポイントに支障を来すことが明らかとなった。
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